■800年の歳月を超えて聖人の存在を感じる洞窟

 テラスからの雄大な景色に心を洗われた後、いよいよ聖地であるフランチェスコの洞窟へと足を踏み入れた。細長い石の通路を通って行くと、人一人入るのがやっと、というような狭く冷たい岩だらけの洞窟があった。この簡素な洞窟こそ、カトリック・キリスト教の重要な聖地である聖フランチェスコの瞑想所だった。フランチェスコはこの石の小部屋にこもって、ほとんど眠ることなく瞑想を続けたという。目の前の狭い空間に約800年前にここで実際に暮らしていた伝説の聖人の息吹が感じられ、自然と敬虔な気持ちになる。

聖フランチェスコの瞑想室であった洞窟への入り口
前ローマ法皇フランチェスコも巡礼に訪れた神聖な場所では、当然ながら写真撮影・スマホ使用・私語などは厳禁。敬意と節度を持って訪れたい
サンクチュアリ内にあるインマコラータ教会へ続く階段

 今に残る聖フランチェスコの伝記には、彼がとても現実的な人間であり、聖書の言葉ではなく実際にその手で神の愛に触れることを欲していた、と記されている。フランチェスコは神の愛に触れるために苦行をし、瞑想をし、その生身の身体で神の存在とその愛を受け取ることに没頭した。1223年の12月25日、この洞窟で彼の『敬虔、清貧、欠乏』という教えを、聖書の中にあるキリスト生誕の場面を実際に人間の体を通して体現して見せることで人々に理解させようとしたフランチェスコは、修道士と村人たちを集め、この貧しい洞窟の中にベツレヘムのイエスの馬小屋を再現して見せたのだという。

 聖フランチェスコが800年前、この小さな洞窟で人々に見せてくれた神の愛。その小さな試みが今では全世界に広まり、人や人形によって毎年繰り返し再現されることになった。クリスマスの飾りとばかり思っていたプレゼーペにこれほど深い意味が込められていたとは思いもせず、この小さな石の部屋から全世界へと広がっていったフランチェスコの精神に思わず胸が熱くなった。

文・写真/田島麻美