現在走行する新幹線の中で最速の時速320kmを誇る「はやぶさ」号。その名の由来となった猛禽類「ハヤブサ」の獲物を狙って急降下するスピードは、新幹線をはるかに凌ぐ時速389kmにも達するそうです。
早春。神奈川県の断崖で、“かっ飛び野郎”のカップルが子育てを始める頃です。ここでは、20年ほど前から世代交代を繰り返しながら毎年のように繁殖をしているようです。彼らのそんな様子をそっとのぞいてみることにしました。
■雪も舞う寒さの中で行われた求愛行動
2月。この日は、夜から朝にかけて急な冷え込みがあった影響で、海面にはもやのような“気嵐(けあらし、蒸気霧)”が発生していました。朝の散歩をしていた地元の方も「珍しいねえ」と驚くほどでした。しかも、神奈川県南部の沿岸だというのに、その後、雪が強く降り始めるくらいの寒さでした。しかし、そんな寒さの中でも、ハヤブサはすでに恋の季節を迎えているはずです。
観察ポイントに到着すると、いきなり上空から「ケッケッケッ」という鋭い声が響きました。ハヤブサの声です。オスのハヤブサが獲物をつかんでメスに受け渡しました。オスからメスへの“愛のプレゼント”です。自らの狩猟能力の高さを誇示し、メスに認めてもらうための大切な贈り物なのでしょう。
ハヤブサの獲物は主にハトやムクドリなどの野鳥です。メスは羽毛をすぐにむしり始めました。羽が牡丹雪のようにふわりふわりと舞い散っていきます。調理が終わるとさっそく食事に。おいしそうに食らいつくメスの様子に、恋が実りそうな予感がしました。
■プレゼントが功を奏した夫婦の契り
食事を終えたメスは飛び立ち、近くの岩場に移動しました。そして、ぐっと体を低くし、腰を斜めに突き出しました。目つきもさっきまで獲物を食べていた時と雰囲気が違います。ん? と思った瞬間、オスが飛び込んできて、そのままメスに覆いかぶさりました。「合体!」 懐かしい映画“釣りバカ日誌”のワンシーンを思い出します。映画ではそのシーンは文字だけでしたが、今はリアルです。目の前で突然始まった行為に、見てはいけないものを見ちゃっているのかもと、動揺する筆者。しかし、右手の人差し指は動じることなくしっかりとシャッターを押していたのでした。
オスは、メスが食べ終わるのをどこかで見守りながら、次に来る「愛の儀式」を想像し、ドキドキしながら待っていたに違いありません。その時のオスの気持ちを考えると、同じ男として「わかる、わかる」と声をかけたくなりました。