■あんかけだけど、あんこじゃないよ

名古屋名物あんかけスパゲッティの缶詰

 お次はスパゲッティヨコイの「ヨコイのあんかけスパゲッティ缶詰」だ。かなり異色の缶詰だが、これが思いがけず焚き火に似合う。

 近年人気の名古屋めしのひとつである「あんかけスパゲッティ」は、トマトソースを中華の“あん”のようにかけて食べる麺料理のこと。だから“あんかけ”という名前が付いており、砂糖と小豆で作る“あんこ”のことではない。黒コショウがビシッと利いた辛口なのだ。

■焦らず、ほぐすべし

麺がくっついて固まった状態

 中身を小鍋に移すと、ほぼ缶の形のまま固まっていた。低温下のために麺同士がくっついているのだ。無理にほぐそうとすると、柔らかい麺が千切れてしまうから、ここで焦ってはいけない。

 熾火の弱火にかけてゆっくり加熱しながら、麺同士を少しずつほぐしていく。同時にトマトソースが加熱され、洋食店っぽい香りが立ち昇ってくる。そうなったら麺を広げ、全体が熱々になるまで加熱すればOKだ。

■主人公ニックのマネがしたい

エビフライを添えればパーフェクト

 添えものにはエビフライを勧めたい。

 というのも、あんかけスパゲッティ発祥の店とされている「スパゲッティハウス・ヨコイ」では、こうしてエビフライを添えたメニューが人気なのだ。エビフライも名古屋名物だから、ダブルで名古屋めしが味わえるというわけ。

 缶入りのあんかけスパゲッティは、さすがに店で食べるものよりも食感が柔らかいけど、特製トマトソースの旨味があり、かなりスパイシーで味が良い。

 それに、缶入りスパゲッティを焚き火で温めるという行為は、アーネスト・ヘミングウェイの短編小説『心が二つある大きな川』のなかで、主人公ニックもやっているぼくが大好きなシーン。それをマネできるのが嬉しいのだ。