■ほろ酔いで楽しめる焼酎蔵の見学&試飲

仕込みで使う和甕のすぐそばで焼酎や仕込みの話を聞きながら焼酎蔵を見学

 県産のさつまいも使った本格焼酎として「薩摩焼酎」ブランドがある鹿児島県で、酒蔵といえば焼酎蔵のことを指す。指宿市内にも6つの焼酎蔵があり、見学ができるところもある。そのひとつが、指宿駅から徒歩約10分ほどでアクセスできる「吉永酒造」だ。

 明治38年(1905年)創業と120年以上続く蔵元で、現在の杜氏の吉永章一さんは5代目にあたる。家族経営の小さな焼酎蔵なので、わずか3人で仕込みからラベル貼りまでほとんどの工程を手作業で行なっているという。

歴史を感じさせる木造の建物。月日を経て建物自体に菌がやどっているのだとか

 また、明治時代から100年以上使い続けている備前焼の和甕(わがめ)で仕込んでおり、見学では甕やタンクの目の前で、仕込みの工程などの説明を聞ける。築80年の建物は風情があり、「建物に菌が宿っている」というのも納得だ。

 蔵のすべての焼酎は、南薩摩原産の新鮮なさつまいもを原料とし、仕込み水にはミネラルを豊富に含んだ地下水を使用しているという。

タブレットや資料を手に仕込みの行程を説明してくれる杜氏の吉永章一さん

 仕込みは、さつまいもが収穫される9月下旬からスタートし、まず、米を蒸して米麹を育て、甕壺(かめつぼ)に入れて発酵させてもろみをつくることからはじまる。1日1.5トンのさつまいもを蒸して砕き、もろみと混ぜてタンクで発酵させてから、やっと蒸留の工程に移る。

 蒸留した焼酎は少し寝かせ、濾過作業やガス抜きのため3か月程熟成させて味を整えてから瓶詰めし、ラベル貼りも手作業で行なうというから、見学を通して1本の焼酎に込められた思いやありがたみをしみじみ実感することができた。

指宿市内の6つの焼酎蔵
通りに面した部分が吉永酒造の商品を売るショップになっている
代表銘柄「利八」だけでも白や黒などの種類やサイズの違うものなどが多数揃っている

 商品を販売するショップコーナーにはさまざまな焼酎が並び、試飲も可能。吉永酒造の代表銘柄「利八(りはち)」。麹やさつまいもの種類、寝かせ方で焼酎の味が変わるそうで、「利八」にもいろいろな種類がある。そうした説明を聞きながら試飲で飲み比べると、確かに違いが分かり、自分好みの一本を見つけることができる。

 焼酎蔵の見学ではオリジナルラベル貼りや試飲などが体験でき、事前連絡が必要だ。ただし、秋の仕込み時期の見学は要相談となる。

明治時代から長く続く「吉永酒造」