■紅葉に包まれる湖畔

 みくりが池の周囲には遊歩道が整備され、一周するのに40分から1時間程度。道の両脇にはナナカマドの赤い実が鮮やかに実り、低木が黄金色に染まっている。標高の高さゆえ、空の青さが一層際立ち、紅葉の色彩を引き立てている。

 観光シーズンのため人は多かったが、湖畔でしばし腰を下ろすと、不思議なほど静かな時間が流れる。紅葉の赤は鮮やかでありながら、どこか落ち着きをもたらす色でもある。山の秋が訪れるはやさと儚さを目の当たりにし、自然の移ろいに心を奪われた。

紺碧の空が美しいみくりが池のリフレクション

■寒さ対策を万全に早めの行動を心がけよう

 10月初旬は紅葉の見頃である一方、山の上はすでに冬の気配を帯びている。昼間は快晴であっても、気温は10℃を下回ることがある。防寒具は必ず携帯しよう。風が強まると体感温度はさらに下がる。

 また、天候の変化が激しいのも立山の特徴である。午前中は快晴でも、午後には霧が立ち込めることもある。レインウェアを持参し、時間に余裕を持った行動が求められる。

 アクセスに関しては、立山駅から室堂まで乗り継ぎや観光を含めて約1時間程度である。日帰りも可能であるが、時間が限られるため朝早く出発するのが望ましい。

 立山・みくりが池は、険しい山登りをせずとも出会える雲上の絶景の池である。特に10月初旬の紅葉シーズンは、一年の中でもひときわ鮮やかな姿を見せる時期である。室堂ターミナルから歩いてわずか10分で到達できるにもかかわらず、そこに広がる景色は日常の延長線上には存在しない。

 紅葉に染まった山の懐に、青く澄んだ湖がたたずむ。その光景は、訪れる者に自然の雄大さと季節の移ろいを同時に教えてくれる。

 ぜひ、立山黒部アルペンルートを訪れ、室堂ターミナルからみくりが池まで歩いてみよう。雲上の秋にしか見られない色彩が、旅の記憶を強く刻み込むに違いない。

ずっとそこにいたいと思えるような景色が広がる立山

【室堂ターミナルからの周回ルート】所要時間
室堂ターミナル(0:00)→ みくりが池(0:10)→ 地獄谷展望(0:20)→ みくりが池温泉(0:30)→ みくりが池周回路 → 室堂ターミナル(0:50)
歩行距離:約1.6km
累積標高差:登り50m、下り50m
合計所要時間:約50分

●【MAP】室堂ターミナル(立山黒部アルペンルート)