秋の上高地で、燃えるような紅葉に彩られた焼岳(やけだけ・標高2,455m)と、エメラルドグリーンの輝きを放つ梓川(あずさがわ)の清流を一度に堪能できる贅沢なコースをご紹介する。今回は、新中の湯登山口からスタートし、紅葉の焼岳を越えて、清流の眺めが美しい上高地のシンボル河童橋(かっぱばし)を目指す、変化に富んだ縦走ルートだ。

■新中の湯登山口から紅葉の焼岳へ

 安房峠(あぼうとうげ)の長野県側にある新中の湯(しんなかのゆ)登山口は、上高地からのコースに比べて人も少なく、静かな山歩きを楽しめる。登山口からしばらくは、樹林帯の中を緩やかに登っていく。

 標高を上げるにつれて、徐々にダケカンバやナナカマドの木々が現れ、赤や黄色に色づいた葉が登山道を彩る。秋の澄んだ空気の中、カサカサと音を立てる落ち葉を踏みしめながら進むのは、なんとも心地よい。

 約2時間ほどで樹林帯を抜け、いよいよ焼岳の山頂を目指して本格的な登りが始まる。標高を上げていくと、火山特有の荒涼とした岩場や砂礫の道が続き、ときおり硫黄の匂いが漂うダイナミックな景色が広がる。

噴気が上がる焼岳山頂の溶岩を、紅葉が彩る

 さらに登りきると、ついに焼岳山頂に到着だ。山頂からは、360度の大パノラマが広がり、目の前には、白く噴煙を上げる焼岳の荒々しい姿。そして、北アルプスの雄大な山々が、まるで屏風のように連なる。

 山頂で少し休憩をとり、眼下に広がる絶景を心ゆくまで堪能しよう。 

噴気を上げる焼岳

■清流・梓川と上高地のシンボル「河童橋」へ

 焼岳山頂を後にして、上高地方面へと下山を開始する。焼岳小屋までは、岩がゴロゴロした急な坂道が続き、転びやすいため慎重に下ろう。

 焼岳小屋を過ぎると、道は比較的歩きやすくなる。下山道でも、秋の紅葉は健在だ。特に、ナナカマドの真っ赤な実が、登山道に彩りを添えてくれる。上高地側の登山口に出ると、そこからは梓川沿いの遊歩道を進む。

 焼岳のゴツゴツとした岩肌から一転、梓川の清らかな流れが心地よく感じられる。エメラルドグリーンに輝く梓川の流れは、心が洗われるような美しさだ。

エメラルドグリーンに輝く梓川
河童橋から望む穂高の山々

 しばらく歩くと、上高地のシンボル河童橋に到着する。河童橋は梓川に架かる木製の吊り橋で、北アルプスの風景とも調和して見事な景色を生み出している。橋の上からは、紅葉で色づいた焼岳と、穂高連峰の雄大な姿を同時に眺めることができる。

 梓川の清流と紅葉、そして壮大な山々が織りなす景色は、まさに上高地ならではの絶景だ。

 橋の上で記念撮影をしたり、ベンチに座って景色を眺めたりと、思い思いの時間を過ごそう。