かつて、登山道は地域住民にとって生活インフラのひとつでした。里と都市、里と里をつなぐ生活道として、また里山に木や食べ物を取りに行く仕事道として、地域住民が自ら道の整備をしてきました。

 しかし、生活道がトンネルやコンクリート道路に代わった現代において、主に登山道を使うのはハイカー、トレイルランナーです。私は「自分たちの遊ぶフィールドは自分たちのできる範囲で持続可能に保つこと」が大切だと考えています。これからは、遊ぶ人たちが地域の住民たちと連携し、登山道整備に取り組むことが理想です。

 ここでは、私が住む和歌山県・龍神村で実際に行っている登山道整備活動「道普請(みちぶしん)」と、その必要性と可能性について、お伝えしたいと思います。

◼️道普請とは“自ら必要な登山道を整備すること”

登山道を整備することを「道普請(みちぶしん)」と呼ぶ

 普請とは、「普(あまね)く請(こ)う」と書くことからもわかるように、大勢の人の労力を集めて工事を行うことです。山間部では、生活に不可欠な道や水路の整備を自分たちで行い、コミュニティを維持する活動の意味で使われます。なかでも、登山道を整備することを「道普請(みちぶしん)」と呼びます。

登山道整備自体が観光資源になるのではないか

 私は現代における道普請を「地域住民のコミュニティ作り」と「観光資源」として捉え、この方向から幻の熊野古道“奥辺路(おくへち)”の再生活動を行っています。

◼️「コミュニティ作り」としての道普請

村を訪れてもらうにはなにが大事?

 常々、現代の地域おこしに必要なのは、定期的に龍神村に訪れてもらえるような関係人口作りだと感じてきました。その点、大勢の方に訪れてもらい、地域住民と仲良くなるための共通目的として、“古道再生”はうってつけでした。さらに、自然の恵みや温泉の素晴らしさも感じてもらう。そうして、村を定期的に訪れるライフスタイル作りができれば、お互いに良い関係性を構築できるのではないかと考えました。

豊な自然を感じてもらうには、山の中に入ってもらうのが一番

 一方で、道普請は地域交流の場として、地域ならではの技術の継承ができるという文化的側面もあります。山道の整備は、ただの土木工事ではありません。

 みんなで協力してDIYをする楽しさもあります。子どもの頃の秘密基地作りのように、みんなでああでもないこうでもないと土や森と向き合い、協力して作業に没頭することでコミュニティが生まれます。

ただの作業ではなく、みんなで行うことでコミュニティが生まれる
協力してDIYをする楽しさもあります

 そうして完成した道をみんなで歩き、協力したポイントや自分がこだわったポイントを踏みしめながら達成感にひたる。すると、次は友達を連れてきて、一緒に歩いてみたくなります。道普請の話をしながら歩くと、不思議とまた道普請がしたくなるのです。

 こうして関係人口の輪を広げていけるのが、「コミュニティ作り」としての道普請です。

道が完成したら、みんなで歩いてみるのも大事