◼️「観光資源」「エコツアー」としての道普請
現代のトレイルランナー、ハイカーにとって必要なのは、魅力的で持続可能なフィールドです。そうしたフィールドでの自然体験はアウトドア観光客と地域を結び、彼らのコト消費や地域貢献は、過疎地域にとって大きな観光資源になります。
では、具体的に彼らはどのような自然体験を魅力と感じ、求めているのでしょうか。
エコツーリズムには「文化的景観」という観点があります。“地域固有の自然条件に適応した人間の暮らしや文化”という視点です。例えば、雪が多い地域の合掌づくりの屋根の家や、雨が多い地域にある石畳の古道などが文化的景観にあたります。この文化的景観の背景にある地域固有の自然環境を読み解く、という知的好奇心をくすぐるような観光が世界中で増えています。
龍神村は林業が盛んな地域です、その背景には“雨が多く、山がしわのように重なる山並みが続いている”という地理的条件があることが読み解けます。雨が多い地域での林業は、土壌流失を防ぐために尾根の自然林を保護しながら植林をします。そのため、奥辺路には保護された豊かなブナの森や自然林の中を歩く尾根道が多いのです。素晴らしい展望が楽しめるポイントもいくつも存在します。
◼️登山道整備も登山の一部である
私たちは、この雨の多さと豊な森を軸に「龍神さまは水の神さま」というテーマを設定して、奥辺路の登山道整備(道普請)を体験してもらうエコツアーを行なっています。水の流れによって傷んだ山道を整備しながら土に触れ、尾根沿いの自然林や里山の植林の森を水の視点から体験してもらうツアーです。
一見、森や川は街から離れているようですが、じつは水源や温暖化防止、土砂災害防止など、環境システムとして街にとっても必要不可欠なインフラです。体験してもらうことで、普段の生活と森との繋がりを知ってもらうことが狙いです。
また、地元・田辺市の子どもたちにも道普請体験や森林環境教育ツアーを行っています。龍神村の森と川から海までをつないだり、林業と道普請を通して森の役割を学んだりできるツアーを設計し、インタープリターとしての仕事の輪を広げています。
現状の課題は、近隣都市部から龍神村へのアクセスに時間がかかることです。登山道整備をするターゲット人口が少ないことも課題です。年々進む登山道の荒廃と整備の人手不足は、全国的な課題でもあります。
現在は、近隣都市部との繋がりを深めて、各地域で定期的な登山道整備イベントを行なっています。将来的には、龍神村ならではのエコツアーとして道普請体験を確立し、登山業界全体に“登山道整備も登山の一部である”という文化を築いていきたいと考えています