■しじみ漁で一休み、昼はテナガエビで癒やしの時間

涸沼・涸沼川を代表する伝統の「しじみ漁」の光景

 午前7時前、朝マヅメの釣りを締めくくるかのように、川の下流から数隻の船がエンジン音を響かせながらゆっくりと姿を現した。涸沼・涸沼川を代表する伝統的な「しじみ漁」の船だ。長い柄の先についた金属製のカゴ「カッター」を操り、川底に棲むシジミを掘り起こしていく。このしじみ漁は主に平日の午前中(夏場は朝7~11時)に行われ、複数の船が入り乱れることもあるため、釣りは控えるべき時間帯。漁を邪魔しないよう、ひとまずロッドを仕舞うことにした。

 たった2時間ほどの釣りではあったが、初めてのチニング(フリーリグ)でキビレを手にすることができ、満足感は大きい。だが、遠方から来た身としては、まだ釣りを終わらせたくはない。一日はまだ始まったばかり。しじみ漁が終わる午後に備え、それまでの時間を有効に使うべく、涸沼川のテナガエビ釣りのポイントへと移動した。

 そこは消波ブロック(通称テトラポッド)帯で以前にも何度か訪れたことがあり、実績の高いポイントだ。前夜に購入しておいたアカムシをエサに、一般的な玉ウキ仕掛けで探ると、すぐに反応があった。数釣りはもちろん、18cmクラスの大型も混じり大満足。

 のんびりとテナガエビ釣りを楽しむ傍ら、近くの潮だまりを覗くと、小さなカニが忙しなく動き回っていた。クロダイが普段どんな餌を口にしているのかが、自然と想像できる光景だ。このような何気ない観察もまた、次なる釣りへのヒントになる。このあと迎える夕マヅメのチニング第2ラウンドに向けて、少しずつ集中力を高めていった。

この日、涸沼川で釣れた最大サイズのオスのテナガエビ(全長18cm)
涸沼川でよく見かけるカニ。クロダイの大好物だ

■夕マヅメ、地元アングラーの一言がもたらした良型クロダイ

夕暮れに訪れたビッグチャンス。この魚だけは絶対に逃せない

 午後4時、気温が落ち着き始めたタイミングでチニング第2ラウンドを開始した。朝とは異なり、潮周りは上げ潮で川の流れはかなり緩やか。これならワームが川底から必要以上に浮き上がってしまうことはなく、狙っていたポイントの水深も2~3mほどと浅いため、とても釣りやすい。魚の気配もあり、釣れる予感が高まってくる。しかし期待に反してアタリはゼロ。やがて周囲には、仕事終わりの地元アングラーと思しき人々が次々と現れ、その一人があっという間にクロダイを釣り上げた。

 釣り上げたその人に話を聞いてみたところ、やはりベテランの地元アングラー。筆者がただ巻きで苦戦していることを伝えると「今日はとても状況がいい!」と意外な反応だった。そして「最近は魚がスレてきているから、ただ巻きだけで釣るのは難しい。今日はボトムバンプの方が断然反応がいいですよ!」と釣り方のアドバイスをくれた。ボトムバンプとは、川底でワームを跳ね上げて着底させる動作を繰り返す誘い方。

 筆者はワームが根掛かりするのが心配でこの探り方を封印していた。しかし彼曰く、「ここは砂地だから根掛かりの心配はほとんどない」。ぜひ一度試してみた方がいいとすすめられた。そこまで言うのならと、さっそく試してみると、すぐにアタリが頻発した。手応えを確かめつつ、アワセのタイミングを調整していった。

 そして迎えた夕暮れ、ついに「ガツン!」という今までにない大きなアタリ。大きく竿を煽ると、「グググッ」と確かな重み。本命のクロダイに違いない。慎重にやり取りし、ついにネットイン成功。サイズは44cm。まさに感無量の一尾だった。先ほどの地元アングラーにお礼を伝えようとしたら、すでにその姿はなかった。適切なアドバイス、本当にありがとうございました。

無事ネットインに成功した本命のクロダイ(44cm)。緊張が解け、カメラを持つ手が震えた

使用したタックル
ロッド:湖用のキャスティングロッドを流用 2.4m
リール:スピニングリール 2500番
ライン:PEライン 0.8号 150m
リーダー:フロロライン 14lb 1m
シンカーストッパー:シンカーの動きを止めるためのゴム
シンカー:7、14g ※川の流れの強さに合わせて使い分けた
フック:ワーム用オフセットフック サイズはワームサイズに合ったもの
ワーム:2.5インチ エビを模したもの

その他の道具
ランディングネット:魚をすくうための網(ラバータイプ)
フィッシュグリップ:魚の口をつかんで持ち上げるための道具 ※クロダイは貝殻をくだくほどの強い歯とあごがあるので注意
プライヤー:口に掛かった釣り針を外すための道具
長靴:ポイントによっては満潮時に足場が水につかることがあるため
ライフジャケット:水難事故防止のため

■ビギナーズラックか、それとも…… また行きたくなる涸沼川

さらなる大物を求め、再び涸沼川の水辺に立ちたい

 初挑戦の涸沼川・チニングゲームは、釣果にも恵まれ、最高の一日だった。地元アングラーのアドバイスやフィールドの魅力も相まって、大いに満足できる釣行だった。ただ、今回はよくある「ビギナーズラック」だったのかもしれない。こうした成功体験に味をしめて次も同じように釣れると思いきや…… なんてことは釣りではよくある話だ。だが、そんな不確実さこそが釣りの醍醐味でもある。次こそは「年無し(としなし・50cmオーバー)」を……。そんな淡い期待を胸に、また涸沼川の水辺に立ちたくてたまらない。

※ 管轄漁協:大涸沼漁業協同組合 https://oohinumagyokyo.jp

●【MAP】涸沼