昨年90周年を迎えた、北海道弟子屈町(てしかがちょう)にある阿寒摩周(あかんましゅう)国立公園。日本でTOP10に入る広さを誇るため、すべてを見てまわるのはなかなか難しい。しかし、阿寒摩周国立公園の特徴である火山、森、湖の3つすべてを約1時間で体感できるお得な散策スポットがあることはご存じだろうか。

 今回は、公園内にある広大な湖・屈斜路湖(くっしゃろこ)に浮かぶ「和琴半島(わことはんとう)」について紹介していく。

■屈斜路湖に浮かぶ「和琴半島」とは?

スタート地点にある、和琴半島探勝路の地図

 和琴半島は、屈斜路湖の南側に突き出た小さな半島だ。

 「和琴」とは、“魚の尾のくびれたところ”を意味するアイヌ語の「ワコッチ」が語源とされている。かつては火山島として独立していたが、長い年月をかけて土砂が堆積して陸地と繋がり半島になった。

 今も火山の名残で地熱が高く、冬でも湖が凍らないスポットや、豊かな土壌によってつくられた原生的な森や植生に出合える。半島には、こうした見どころを楽しみながらぐるりと一周できる「和琴半島探勝路」が整備されている。半島の付け根からスタートする、周回2.5kmの散策路だ。

■和琴半島おすすめポイント

●1時間で気軽に散策できる

探勝路を歩き始めて15分ほどで見える景色。湖の水面に映る木々の緑に目を奪われる

 和琴半島探勝路は、1時間程で気軽にめぐることができる。歩き始めてすぐに、カツラやトドマツなど、広葉樹と針葉樹が混ざり合う美しい緑の世界に包まれる。案内板によると、この半島に広がる森は、北海道が開拓される以前から残るものだそうだ。木々の合間からは屈斜路湖の湖面が見える。鏡のように緑や対岸を映し出す美しさに、思わず目を奪われる。

 探勝路は、基本人1人が通れるくらいの道幅で、地面がむき出しになっていたり、木の根や木の葉があったりと、登山道のような趣だ。半島の先端までは高低差が少なくサクサクと歩けるが、先端に近づくにつれ高さが出てくる。探勝路の標高差は約20m。途中、階段が整備されているところもあり、スニーカーでも問題ないが、グリップの効いた靴だとより安心して歩けると感じた。

 高さのある場所から望む屈斜路湖が、また格別だ。太陽の日差しを浴びて湖面がキラキラと輝く景色も、角度を変えると、空を映して青々と広がる雄大な眺めに変わる。短時間でいくつもの絶景が楽しめるのも大きな魅力だ。

木々の合間から見える屈斜路湖。半島の先端に近づくと高さが出てくるため展望がよい

●多様な動植物の宝庫

 原生的な森がある和琴半島は、北海道ならではの多様な動植物の宝庫でもある。筆者が訪れたのは9月初旬の早朝の時間帯だったが、歩き始めてすぐに、地面に落ちたクルミを集めるシマリスや、木を「コココココン!」とものすごい速さでつつくキツツキの仲間・アカゲラに出合うことができた。

 他にもエゾモモンガ、エゾシカ、キタキツネ、日本最大級のキツツキであるクマゲラが生息していて、冬にはオオハクチョウが訪れることでも知られている。また、夏の本州でお馴染みのミンミンゼミの北限地としても知られ、北海道東部ではここにしか生息していないことから“和琴ミンミンゼミ”と呼ばれているそうだ。

 春から秋にかけては、山野草も楽しむことができる。4月~5月はミズバショウや、北海道の春を代表する花であるエゾエンゴサク、6月~7月はミヤマハンショウヅルやクルマユリ、8月~9月はトリカブトやオオウバユリなどさまざまな草花を愛でることができる。

 秋には木々の紅葉も美しく、季節を変えて何度も訪れたくなる場所だ。