長く過酷な猛暑が続いた夏でしたが、今年は各地の山で紅葉がとくに綺麗に色づいているようです。長野、新潟県境に位置する百名山「雨飾山」は頂上付近から中腹にかけて色づきが増してきており、10月下旬にかけて、さらに鮮やかな紅葉になりそうです。

 この山には筆者が所属する小谷村山案内人組合が受け持つルートもあります。作業も含め、何度も訪れている場所ではありますが、秋になってからは登っていませんでした。責任を持って紹介できるよう、紅葉の具合と今一度登山道の様子を確認してきました(取材日:2025年10月15日)。

■小谷温泉、雨飾高原から目指す「雨飾山」

駐車場、小屋の奥に登山口があります

 長野県小谷村と新潟県糸魚川市の県境に位置し、日本百名山の一つにも挙げられているのが雨飾山(あまかざりやま)です。標高は1,963m。四季を通じて魅力的な山ですが、とくに紅葉の時期の美しさは格別です。秋は気候的にも登りやすいので、多くの登山者で賑わいます。

 「雨飾温泉(新潟県糸魚川市)」からのルート他、登山道はいくつかありますが、今回は「小谷温泉」「雨飾高原」がある長野県小谷村側のルートから登ってきました。緑豊かな森から迫力の谷、緊張感のある岩場、爽快な笹原の稜線歩きなど、要素がギュッと凝縮していて歩きごたえがあります。

飲料の自販機の隣に携帯トイレが販売されています

 キャンプ場脇の駐車場にある登山口には、トイレと休憩できる小屋、飲料と携帯トイレの自販機があります。登山口に着いた朝の気温は14℃と少し肌寒い感じ。まとまった雨の降った翌日、徐々にガスが抜けて青空が覗いて登山日和が期待できます。

 小屋で登山届を記入したらスタート。サルナシやヤマブドウの蔓が茂るプロムナードを抜け、まずは緩やかに下っていきます。ここは大海川沿いの河原となっています。2022年に少々ルートが変わっていますが、道標に従えば問題ありません。

小川に泳ぐイワナ。禁漁区ということもあるのでしょう、人影をあまり気にしていない様子です

 木道からは小川に揺らぐイワナの姿も見ることができます。ちなみにここは(渓流釣りシーズンも)禁漁区です。

■降り注ぐ秋の光! 美しいブナの森

木々の隙間から秋の光が降り注ぐ「ブナ平」は休憩におすすめの場所。まだ色づき始めたばかり
昨年、10月22日撮影の「ブナ平」。黄金色の紅葉が美しい

 いきなり急な斜面となり“登り”が始まります。しかも長く続きますので、焦らずゆっくりと(下りでは疲労や焦りもあり、スリップして転倒する人も多いです)。ブナの巨木が点在し、とても美しい森です。急坂ですが、できれば顔を上げて景色を楽しんでもらいたいところです。

 傾斜が緩くなってしばらくすると「ブナ平」へ到着です。秋の光に照らされた明るい森の景色に心躍ります。腰を下ろし、四季折々の森の表情を眺めつつ一息入れるのにもってこい。筆者は山仕事も含めて行き帰りにここで休むのを楽しみにしています。ブナの葉はやや黄色く色づき始めたばかりでした。

ルート上、唯一の携帯トイレ用ブース

 森のなかをトラバースするように進むと、ルート上、唯一の携帯トイレ用ブースがあります。その先、森を抜けると視界が開け、いよいよ「荒菅沢」の絶景が! 急な斜面を沢に向けて下っていきます。