■奥只見湖から遊覧船で尾瀬口へ

奥只見湖の遊覧船乗り場は、ダム下の駐車場から少し上がった場所にある。徒歩でも行けるが、駐車場横のスロープカーに乗ってダムの上にある広場まで移動することもできる。広場から遊覧船乗り場に向かうと、さまざまなタイプの運航船が停泊している。ここから尾瀬口コースの船に乗り、湖上から手つかずの自然を大パノラマで眺めながらクルージングを楽しんでいると、前方に燧ヶ岳が見えてくる。



日本百名山のひとつであり、東北地方以北で最高峰となる燧ヶ岳は、5つの連山で形成されているため眺める方角によって異なる形に見える。新潟県側からだと、5つのピークのなかでも標高が高い、柴安嵓(しばやすぐら)と俎嵓(まないたぐら)が並んだ双耳峰に見える。


■尾瀬口から先はバスで移動

尾瀬口の船着場に到着したら、今度は乗り合いバスに乗り換えだ。尾瀬口コースの遊覧船も、このバスも予約制なので、船の到着時間に合わせてバスが運行されている。バスは「樹海ライン」と呼ばれる国道352線を通って、尾瀬の入山口である「御池」や「沼山峠」へと進んでいくが、最初のうちはときどき飲食店や宿泊施設を見かけたものの、徐々に道が細くなりカーブの多い山道になっていく。国道とは思えぬほどの過酷な道を通るのも、このルートならではの醍醐味だろう。


■御池から三条の滝へ

尾瀬口の船着場からバスでアプローチする御池と沼山峠の入山口は福島県に位置している。御池は「三条の滝」などに行くことができる玄関口だ。燧ヶ岳北側の山腹を通って滝へと向かうコースは「燧裏林道」と呼ばれ、3つの池がある御池田代やコース最大の湿原である上田代、燧ヶ岳の双耳峰が見える天神田代などの湿原がいくつも点在している。
そして、只見川に懸かる三条の滝は、日本の滝100選にも選定されている名爆。尾瀬沼が水源の沼尻川と、尾瀬ヶ原から流れるヨッピ川が合流した只見川は、いわば尾瀬中の水を集めた川。その水が落差約80mの三条の滝から水煙をあげながら流れ落ちる様子は迫力満点だ。


只見川の上流へと足を延ばせば、もうひとつの滝「平滑ノ滝」を鑑賞できる。さらに登り詰めていくと尾瀬ヶ原の東端にあたる「見晴」に抜けることができる。また、御池は燧ヶ岳登山の入山口でもあり、登頂後はそのまま尾瀬沼に下ったり、尾瀬ヶ原に抜けたりと、さまざまなルートで尾瀬を楽しむことができる。
■沼山峠から大江湿原や尾瀬沼へ

標高1,700mに位置する沼山峠はバスの終点。ここから大江湿原を経て尾瀬沼に行くことができる。入山口から40分ほどでアクセスできる大江湿原はミズバショウやワタスゲ、ニッコウキスゲの群生など季節ごとのさまざまな草花を楽しめ、尾瀬ヶ原よりも草花の開花の時期が遅いという。
大江湿原から流れる大江川を進んでいくと尾瀬沼が見えはじめ、湖畔には「三本カラマツ」と呼ばれる木がランドマークのように立っている。


湖畔には山小屋やキャンプ場が点在し、食事やドリンクを提供している山小屋もある。ベンチに腰かけ、湖畔から燧ヶ岳や大江湿原の絶景を満喫できるポイントもあるので休憩に最適だ。また、尾瀬の最新情報が入手できる「尾瀬沼ビジターセンター」の近くには売店もあり、Tシャツやてぬぐいなど旅の思い出にぴったりのオリジナル商品が購入可能。沼山峠から尾瀬沼までのコースは、尾瀬入門に最適なコースだといえるだろう。


■道中の楽しさが「魚沼から行く尾瀬ルート」の魅力

「魚沼から行く尾瀬ルート(※事前予約制)」は、電車ユーザーでも利用しやすい。上越新幹線と上越線の列車が停車する浦佐駅から路線バス(※土日祝日のみ運行)で奥只見ダムに向かい、ダム湖の遊覧船で尾瀬口、そして乗り合いバスで御池や沼山峠へと移動してくことができる。これらの乗り物の運賃がセットになった「尾瀬パス」を利用すると、乗り物ごとに運賃を払う手間がなく、料金も少しお得になる。
魚沼からマイカーで御池の入山口まで行くこともできるが、次々と乗り物を変えて向かう「魚沼から行く尾瀬ルート」のほうが、運転のストレスからも解放されて、のんびり尾瀬まで行くことができる。奥只見シルバーラインや遊覧船など思い出に残る体験もできるので、“移動する楽しさも”ひっくるめて尾瀬への旅を堪能できる。