自身のブランドを持ってビジネスをすることは、田舎暮らしでは有効な生業作りの手段のひとつ。
僕は移住先で手に職をつけたいとの思いから珈琲焙煎を始め、自分のブランドとして10年近い時間をかけて、コツコツと続けてきました。
今回は移住先で安定した生業を確保するために、「ブランディングの重要性」という角度からお話ししましょう。
■田舎暮らしでも可能性のある働き方

製品やサービスなど、自身のブランドを作ることは、田舎暮らしでも非常に可能性のある働き方と言えます。手がける製品やサービスへの自信と好きな気持ちさえあれば、積み上げを継続することで価値を高めていける手段です。
経験上、大事なのは3つのポイントです。まず「特徴のある(自信の持てる)製品作り」ができるか。2つめは「継続的な告知活動」で認知を拡大させること。最後に「魅力を理解してくれる仲間作り」です。
■ 1:特徴のある製品作り

僕は、移住前はチェーンのコーヒー店で焙煎士として働いていました。当時から、いずれ独立して自分のブランドを持ちたい、と考えていた訳ではないですが、移住をきっかけに経験を生かして珈琲の焙煎を始めました。
初めは自分が主催するツアーの時に、山中で飲む分の珈琲を焙煎するだけでよかったんですが、龍神村ならではの山をガイドするうちに珈琲にもこだわりが出てきて、ならではの珈琲を焙煎してみたくなりました。龍神村と言えば、龍神温泉です。日本三美人の湯龍神温泉水を使って生豆を洗い、美人になった生豆を焙煎してクリアな味わいの「ドラゴンウォッシュロースト」に仕上げました。
必要な設備投資などの資金は、クラウドファンディングを活用して集めました。

■ 2:継続的な告知活動で認知拡大


始めた当初から結果が出たかというと、商売は難しいもので、なかなか売り上げは思うように伸びませんでした。
僕の場合、トレイルランニングのレースに参加した時に知り合いに手売りしてレースの交通費を稼ぐくらいからスタート。次第に、レース会場でドリップ珈琲を提供するようになり、アウトドアフェスでイベント出店をしたり、ウェブ通販での販売まで開始しました。
当時の自分は、珈琲を売りながら「龍神温泉の名前を売ること」を活動テーマに据えていたため、お客さんと会話しながら龍神温泉を知ってもらえるイベントへの出店を繰り返しました。

イベントで出会うお客さんは一期一会。「せっかく一度だけ飲んでもらうなら、味で勝負だから最高の一杯を淹れたい」と、ドラゴンウォッシュローストの旨味を最大限引き出せる淹れ方にもこだわるようになりました。
徐々に成果が出始めます。イベント出店でおいしいと言ってもらえることが増え、豆も買ってもらって手応えを感じるようになりました。さらに、「昨年飲んでおいしかったから、今年も飲みに来ました」と言っていただけるようになり、徐々にブランドの認知が広がっているように感じました。
しかし、売り上げの核にしたかった通販はというと全く売れるようになりませんでした。