信州にも新緑の季節が訪れたかと思えば、あっという間に緑が濃くなってきています。自転車を漕いでいても気持ちのいい季節ですね。

 そんななか訪れたのは、長野県上伊那郡辰野町の地理的に“日本のど真ん中”と呼ばれている場所。長く続く快適な砂利道をグラベルバイクで走り抜けました。

■どこでも走れる!? グラベルバイクとは

ロードバイクだとグリップ力やパンクが怖いような砂利道でもガンガン走れるグラベルバイク

 今回、移動手段には“グラベルバイク”を使いました。自転車の一種ですが、比較的新しいカテゴリーで耳慣れないかもしれません。

 グラベル=砂利道。ざっくりと説明するとロードバイクの車体に太くてゴツゴツしたMTB用のタイヤを履いているイメージです。舗装路(オンロード)でも未舗装路(オフロード)でも快適に走行できる自転車といったところ。乗り方次第ではどこでも走れてしまう自由さがあります。

 元々はヨーロッパで生まれ、アメリカで人気に拍車がかかりました。荷物をたっぷり搭載しての“バイクパッキング”、ロングライドの自転車旅に使用されたりもします。

■新緑のグラベルロードを抜け、伊那谷を望む大山へ

地形図と標識を頼りに集落を抜けて「林道王城枝垂栗線」を目指します

 スタート、そしてゴールは「辰野ほたる童謡公園」です。ここから山すその里を抜けて「林道王城枝垂栗線」へと向かいます(少々迷いました)。

 新緑の森のなか、明るく降り注ぐ緑のシャワーが爽やかで、ペダルを漕いでいるだけで心躍ります。実はスタートするときは予報に反して雲が多く走り出すのを躊躇していたのですが、登り続けているとじわじわと暑くなってきました。曇りがちな天気でよかったのかもしれません。標高を上げるにつれ肌に感じる空気も冷涼になってきてひと安心。

緑のシャワーを浴びながらじわじわと登っていきます
藤の花の香りを吸い込み、ひと休み。至福のひととき

 休憩しようと思っていると雅やかな香りが漂ってきました。顔を上げると藤の花を見つけました。まさに風薫る5月。アカマツ林ではアカゲラのドラミングが威勢よく響いています。風以外に匂いや音も敏感に感じることが自転車の魅力ですね。

アカゲラのドラミングが響く森。グラベルロードを軽快に登っていきます

 案内標識に従って舗装路と分岐すると、いよいよグラベルロードが始まります。といっても、よく均された路面は自動車も走行できます。

大城山の山頂は広い芝の広場でサイクルラックも用意されています。伊那谷の眺めが伸びやかに続いています

 車止めから一段上がると「大城山(おおじょうやま)」の山頂へ到着しました。標高は1,027mで、スタート地点からは約300m上がったことになります。南に向けて延びる伊那谷を蛇行する天竜川。右手に中央アルプス、左手には南アルプスが連なっています。雲の切れ間から残雪をいただく山々の稜線、伸びやかに広がる眺めに、気持ちまですっきりとするようでした。