ぼくの故郷の宮城県は、とにかく5月の気候が気持ちよく、季節の祭事が多い。たとえば、杜の都と呼ばれる緑多き仙台市には、新緑シーズンを彩る風物詩「青葉まつり」がある。伊達政宗の命日にちなんだ5月の第3日曜日と、その前日の2日間に渡って行われる大きな祭りだ。これが初夏の合図となり、町も山も新緑のエネルギーが満ちていく。

 同じ宮城県の海上には、金華山(きんかさん)という“島”がある。東北屈指の霊場で、信仰の歴史が深く、例年5月に大祭が行われている。ぼくは東日本大震災のあった2011年から、毎年のように訪れるこの島の大ファンだ。島の春夏秋冬を体験した中でも、青葉と青い海が美しく、かつ、祭事のある5月がイチ推し。とくに今年は12年に一度の「巳年大祭」が行われる、島にとって大切な年、大切な月なのだ。

■「神の島」として知られる東奥三大霊場のひとつ

最高地点の先にある展望スポット。圧倒的な絶景が広がる!

 牡鹿半島の沖合に浮かぶ金華山は、最高地点が445mの島。古より「神の島」として知られており、東奥三大霊場のひとつだ。東北各地はもちろん、親潮の海でつながる南関東からの参拝客がとても多い。ちなみに、東奥三大霊場のほか2つは、青森の恐山と山形の出羽三山である。

 島に渡るには、女川港または鮎川港から出る船に乗る。運航日は限られており、天候によって欠航する可能性があるため、事前に運航情報を確認しなければならない。自然の在りように左右されるのは、まるで神の島に渡るための運試し。無事に渡って戻ってこれるのか、毎度のことながらドキドキなのだ。呼ばれた人しか渡れない島、というと、ちょっと大げさだろうか。