熊本を代表する観光地のひとつ、阿蘇山。

 周辺とくじゅう連山の火山群など一帯は「阿蘇くじゅう国立公園」として国立公園にも指定され、阿蘇カルデラの独特な地形や辺りの植生は人々を魅了してやまない。

 今回は、夏の時期だからこそ見られる阿蘇カルデラの絶景スポットを紹介していく。

■世界最大級の「阿蘇カルデラ」

放牧された阿蘇地方の特産品「あか牛」と阿蘇山

 カルデラとは、火山活動によってできた円形型の窪地のことだ。阿蘇カルデラは、阿蘇山周辺に東西18km、南北25kmにも広がる規模を誇る。

 最大の特徴は、カルデラ内に約5万人もの人々が住み、道や鉄道が整備され、多様な産業が盛んに営まれていること。人とカルデラが共存している姿は世界的にもかなり珍しいらしい。

 また、広大な土地に広がる美しい草原風景は、1000年近く人々の手で守られてきたものであることも、大きな魅力のひとつだ。

■阿蘇カルデラの見どころ 3選

1. 大観峰(だいかんぼう)

360度、一面に広がる草地。青々とした緑の絨毯が見られるのは夏のみだ

 阿蘇山周辺は目にする景色すべてが美しい。

 なかでも、阿蘇山の北側、北外輪山の一峰にあたる大観峰(標高約935m)は、阿蘇の草原景観を代表する絶景スポットである。日本最大といわれる牧草地は、夏になると、青々とした緑の絨毯となり、どこまでも広がるなだらかな地形を覆い尽くす。実際にその場に立つと、美しさや壮大さに圧倒されるばかりだ。

 直下を望む360度の大パノラマも圧巻だ。筆者が訪れた日はやや曇っていたが、それでも広大な牧草地と、雲の合間から、阿蘇の青々とした田園風景や街並みの景色を一望でき、感動を覚えずにはいられなかった。

●【MAP】大観峰(だいかんぼう)

【大観峰までのアクセス】
・車:熊本市内から一般道で約90分、熊本空港から一般道で約60分、JR阿蘇駅前から約30分
・バス:JR阿蘇駅前から約40分(土・日・祝限定)

熊本県公式観光サイト 大観峰:https://kumamoto.guide/spots/detail/211

2. 草千里ヶ浜(くさせんりがはま)

標高1,100mの位置にある草千里ヶ浜。夏は緑輝く草地が広がる

 阿蘇山に来た人が必ず訪れるという観光スポット、草千里ヶ浜(標高1,100m)。

 今の時期は大草原と池が織りなす、緑と青のコントラストがとにかく美しい。池は、火口跡の窪地に雨水が溜まってできたものだそうで、晴れた日には空を映した水の青が、夏の鮮やかな緑の草原に映え上がる。

 大草原では乗馬体験もできる。馬が悠々と歩く姿を見ているだけでも、異国の地に来たかのような気分を味わえる。

 近くには阿蘇火山博物館や、その上には阿蘇の絶景を望める草千里展望所がある。レストランやお土産屋も充実しており、1日中楽しめる見どころ満載のスポットだ。

●【MAP】草千里ヶ浜(くさせんりがはま)

【草千里ヶ浜までのアクセス】
・車:熊本市内から約一般道で80分、熊本空港から一般道で約50分
・バス:JR阿蘇駅前から路線バス「阿蘇火口線」で約30分。「草千里阿蘇火山博物館前」下車すぐ

・熊本県公式観光サイト 草千里ヶ浜:https://kumamoto.guide/spots/detail/210

3. 阿蘇中岳火口(あそなかだけかこう)

阿蘇中岳火口で最も活発な第一火口。火口湖から白煙が上がり続けている

 カルデラ内の中央にそびえる阿蘇五岳(根子岳・高岳・中岳・烏帽子岳・杵島岳)の中でも、活発な火山活動を続けている中岳(標高約1,500m)。エメラルドグリーンの火口湖から白い噴煙がもくもくと上がる様子が見え、今なお噴気活動している活火山でありながら、巨大な噴火口のすぐ近くまで足を踏み入れられる珍しいスポットである。

 遠くには、先ほどまで見ていた牧歌的な緑の草原が広がっているが、火口周辺は岩がむき出しの荒涼とした灰色の世界で、夏の時期はその対比がいっそう印象的になり、対照的な景観をつくり出す。

 辺りには何かが焦げたような硫黄臭が終始漂っており、火口付近にはいくつもの噴火時の避難壕もある。

 なお、7月4日に噴火警戒レベル2が発表された火口周辺警報は、25日にレベル1に引き下げられ、火口見学が可能となっている(一部規制あり)。訪れる際には最新の規制情報を確認するようにしよう。

●【MAP】阿蘇中岳火口(あそなかだけかこう)

【阿蘇中岳火口までのアクセス】
・車:熊本市内から阿蘇山上広場まで約100分、阿蘇山公園有料道路で約5分
・バス:JR阿蘇駅前から草千里・阿蘇山上ターミナル行きで約35分。終点下車後「阿蘇山火口シャトル」に乗り換えて約5分
※阿蘇山上ターミナルへは、熊本市内・熊本空港からの直行バスもあり(1日1往復)

・熊本県公式観光サイト 阿蘇中岳火口:https://kumamoto.guide/spots/detail/209

・阿蘇火山規制情報:https://www.aso-volcano.jp/

●番外編 道中のあか牛

放牧され、自由に歩き回る「あか牛」を見られるのは春〜秋

 道中では、放牧されている阿蘇地方の特産品「あか牛」に遭遇することも。

 一頭が、道路のすぐ近くの柵まで寄って来たので、手を伸ばせば触れられそうな距離で見ることができた。

 阿蘇山周辺に広がる「阿蘇カルデラ」は年間を通して楽しむことができる。しかし、緑が一番美しく壮大に広がる牧草地が見られるのは夏の時期だけだ。阿蘇中岳火口の荒々しい岩肌の景色と相まって、その美しさは一層際立って見えた。

 この圧巻の自然と感動を、ぜひ現地で感じてみてほしい。

 

※この記事の情報は2025年7月現在のものです。内容が変更される場合もありますので、最新の情報はリンク先のHPでご確認ください