ぼくは4月になると、芽吹いたばかりの鮮やかな緑色に癒されたくて低山に入る。できればその青葉の隙間から、真っ青な春の海が見えるとうれしい。そうときたら、暖かな黒潮の海の近い山と、波のない穏やかな海が頭に浮かんでくる。
よい思い出があるのは、六甲山地の西端に位置する須磨アルプス。新幹線と在来線で容易にアクセスできるし、なにせ山と町と瀬戸内海がとても近い。月半ばを過ぎると気温も上昇してくるから、桜と入れ替わってツツジが鮮やかに咲き誇り、下山後に三ノ宮で呑む冷たい生ビールがひときわ美味しい。
■縦走よし、ピークハントよし、途中下山して街ブラするのもよし!

神戸は、とにかく公共交通機関が充実している。山へのアクセスが抜群によいのは、六甲山地全体に言えることだろう。とくに須磨アルプスのスタート地点となる塩屋は、JR山陽本線と山陽電鉄それぞれに駅があって便利なことこのうえなし。下車して改札を出れば、そのまま山旅がはじまるのだ。
須磨アルプスは、全長56kmにおよぶ六甲全山縦走路とコースがかぶっている。道中にはたくさんの低山のピークがあり、周辺地域に下山できるエスケープルートが充実している。体力や歩き旅の目的にあわせて自分好みのコース計画ができる点で、とても人気が高い山域だ。

ぼくが4月に歩いたコースは、塩屋駅からスタートして鉢伏山、鉄拐山(てっかいさん)、高倉山、栂尾山、横尾山、そして東山を経て板宿駅をゴールにする約9kmの道のり。標高にして200m程度の“低空のトレイル”をゆく尾根道は最高に気持ちがよく、青い海の絶景があり、色鮮やかなツツジがあり、大型団地の建造美まであって、歩いていて本当に楽しい。ぼくのまわりにいる熟練者たちにも自信をもってすすめられる。
ゴールに設定する板宿駅周辺は飲食店が多いから、ひとまず乾杯してもいいし、カフェで甘味を急速チャージするのも捨てがたい。電車で移動すれば、20分ほどで三ノ宮まで移動することができるのもよい。
山、海、町の近さは、すなわち旅の寄り道の選択肢の広さともいえるから、歩き旅を好む人の旅情をかき立ててくれる。神戸、本当に楽しい。