■クマバチは危険なハチではない

 ハチというと、「人を刺すことがある危険な虫」というイメージがあるが、クマバチは危険な虫ではない。

 じつは、クマバチのオスはそもそも人を刺すことができない。なぜなら毒針を持っていないのだ。ハチの毒針は「産卵管」というメスのみが持つ器官が変化してできたものであり、産卵管を持たないオスが毒針を持つことはない。これはハチ共通の特徴である。

 ちなみにクマバチの雌雄は、顔の正面に黄色い部分があるかどうかで見分けられる。黄色い部分があれば、オスだ。

クマバチのオス(左)とメス(右)

 さらに、クマバチは温厚な性格のハチと言われている。毒針を持つメスであっても、直接手で掴んだり巣を攻撃したりしない限り、心配は無用だ。

 僕自身の経験としても、今まで何度も至近距離で写真撮影をさせてもらっているが、花蜜を吸いにやってきたクマバチに刺されそうになったことはない。

■クマバチは受粉を助けるパートナー

フジの花にやってきたクマバチ

 クマバチの属するミツバチ科のハチたちは、花粉や蜜を幼虫に与える習性を持ち、これらは「ハナバチ」と呼ばれている。ハナバチの仲間はその行動から花たちの受粉を助けるため、人にとっても非常に大切な虫たちである。

 特にクマバチは、マメ科植物の「フジ」と共生関係にあるとされている。フジの花蜜を吸うには固い花弁を開く必要があり、クマバチのようなパワーを持つ虫でないと花蜜を吸うことができない。花には特定の虫に合わせたようなからだのつくりをしているものがあるが、フジの花はクマバチに特化した形態をしているのだ。

 このようなクマバチのオスとメス、クマバチと花との関係にも注目すると、より楽しく観察できる(フジの開花時期は4月半ばから5月頃)。ぜひ、試してみてほしい。