この時期になると、大きなハチがホバリング(空中で静止)している姿を見ることがある。さらに、なにかのタイミングで突然、「ブーン……!」という大きな羽音とともに急速度でこちらに向かってきたかと思えば、ピタッと止まって、また元の位置に戻っていく。
このようなハチを見て、「怖い」「危険だ」と感じてしまうのは当然だろう。しかし、安心してほしい。この行動をとっているハチが人を刺すことはない。
その理由を解説していこう。
■春にホバリングするハチの正体
春にこのようなホバリング行動をとるのは、「クマバチ」。日本には複数種のクマバチいるが、もっとも身近に見られるのは「キムネクマバチ」という種だ。体長は2cmを超え、そのずんぐりした大きな姿こそが”熊蜂”の名前の由来である。

クマバチは「ミツバチ科」という分類グループに属するハチであり、花の花粉や花蜜を食べる。4月から10月頃まで活動するが、冒頭のホバリング行動が見られるのは春だけだ。
■クマバチがホバリング行動をする理由
では、このクマバチがホバリング行動をするのはなぜか?
その理由は”オスがなわばりにやってくるメスを待つため”である。
春はクマバチの繁殖期であり、オスはホバリングをしながらなわばり内を見張ってメスを持つ。なわばりに侵入したものがいた場合、近付いてメスかどうかを確認するのだ。
この行動は人に対しても行われるため、「ハチが突然こちらに向かって飛んでくる」という体験に繋がっている。しかしながら、この時のクマバチのターゲットはあくまでメスであり、攻撃をするために近付くわけではない。そのため、メスでないことがわかったら、早々に引き上げて見張りに戻るのである。