■ブナの巨木を見上げて深呼吸
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「田茂木平」の外れにある小屋を過ぎたあたりから、緩やかな尾根に取り付きました。日射の影響を受けにくい場所は幾分柔らかい雪がのっています。本当にわずかな向きの違いで雪質が違います。正直、雪質には期待していなかっただけに「ひょっとしたら」と期待が高まってきました。
標高が上がるにつれ、柔らかい新雪の量が増えてきました。尾根上の日射を受けやすい面でも徐々に雪質がよくなってきており、シール越しに感じる感触もソフトで気持ちいいです。
尾根は広くなだらかだったり、ときおり、やや狭まり斜度を増したりしますが、おおむね快適です。美しいブナの森は静寂に包まれ、先行者のトラックもなく貸し切り状態です。太く高い、枝ぶりも見事なブナを見上げながら深呼吸。大木が過ごしてきた年月に思いを馳せます。
■真っ白な山頂、パウダーの感触を噛み締めながら美しい森を滑り抜ける
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標高約1,150m、ブナの木立に囲まれた平らでひと休み。森の中とはいえ、ちょうど進行方向から吹き付ける雪と風にフードとバラクラバで覆っていても顔が凍てついてきます。
その先、ハーフパイプ状の地形まで来ると山頂まではあともう少しです。ここでヘルメットを被りゴーグルも装着しました。そしてついに山頂へ。案の定、風雪が強く吹きつけ、ただただ真っ白な世界が広がっていました。登頂写真を撮ったら長居は無用、そそくさと風裏に移動して滑走を開始します。
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白い雪面にブナの太い幹がコントラストを成し、滑走の手助けとなってくれます。来たルートを辿りながら滑る視界をよぎる、美しい雪景色。よく走る雪についスピードを出してしまいそうです。
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目星を付けていた北東斜面はまだノートラックで残っていました。登る途中で雪面の安定度は確認していたのですが、そこから時間が経っているので慎重に。新たに降った雪が湿っていたせいでしょうか、少々重くなったパウダーでしたが、気持ちのいい滑走を楽しめました。下部は「滝の沢」に吸い込まれないよう、高度を保ったまま田茂木平へ。林道部分もよく板が走り、最後までしっかりと滑りを堪能することができました。
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一帯は豪雪地です。標高こそ高くはないですが、GW連休を過ぎても楽しめるくらいシーズンは長く続きます。時期によって、また天気によって、訪れるたびに違う表情を見せてくれる鍋倉山の冬。大切にしたい山スキー名山です。
参考行動時間:4時間30分
移動距離:7.4km
標高差:登り745m、下り745m
※2月下旬、またしても最強寒波とともにまとまった降雪となっていますね。所要時間はルートや積雪状態、パーティーの足並みによって大きく変化します。余裕をもった計画で。