冬の前武尊に伸びる一本のロープ。その先には滝や谷が待ち構える危険な地形が広がっています。このロープは、群馬の山を愛する地元有志たちが、15年以上前から続けている安全活動の象徴です。かつてオグナほたかスキー場からアクセスできる前武尊のバックカントリーエリアでは、道迷いから遭難事故に発展するケースが後を絶たなかったといいます。
「この山の魅力を知る人だからこそ、悲しい事故を防ぎたい」
そんな思いから始まった活動は、驚くべき成果を上げています。スノーシーズン中に設置されるこのロープには、すべての人が安全に下山してほしいという、山を愛する人々の願いが込められているのです。
■「その先に何があるのか」ロープが伝える山からのメッセージ
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「このロープは、山からの大切なメッセージです」
群馬の山を知り尽くした地元有志の一人は、そう語り始めます。オグナほたかスキー場からアクセスできる前武尊のバックカントリーエリアに設置された黄色いロープ。一見何気ない存在に見えますが、その先には滝や谷といった危険な地形が待ち構えています。
15年以上前、このエリアでは道迷いから遭難事故に発展するケースが年に何件も発生していました。雪に覆われた冬山では、普段以上に地形の把握が難しくなります。一度道を誤れば、救助すら困難な場所へと追い込まれてしまうのです。
「何とか事故を防げないか」
その切実な思いが、このロープを設置する活動の始まりでした。