■カメムシの面白い生態「カメムシのにおい」
冒頭の疑問に対する答えは上記の通りなのだが、カメムシ自体が非常に面白い生態を持つ虫であるので、続いてその話をしよう。
カメムシの代表的な特徴といえば「におい」だ。
カメムシの「におい」は、人がカメムシを敬遠する原因にもなり得るが、この機能はカメムシならではのもので、昆虫観察時の観察対象としても非常に面白いものである。
まず、カメムシにとってにおいはコミュニケーション手段の一つで、状況によって異なるにおいを出す。例えば、危険を仲間に伝える警報フェロモン、えさがあることを仲間に伝えたり、異性を呼び寄せる集合フェロモンを出すことなどが知られている。
このような、前提知識を知っていると、「カメムシが今こんなに集まっているのは、集合フェロモンを出しているのかな?」とか「交尾しているカメムシのペアは、フェロモンを使って出会ったのかな?」などと確認したり、考察することが楽しくなるのだ。
さらに”カメムシが出すにおいは、種によって違う”というのも面白い。
というのも、いわゆる「カメムシ臭」と言われるパクチーのような独特のにおいの原因は「不飽和アルデヒド(芳香環を除く炭素-炭素不飽和結合をもつアルデヒド類の総称)」と呼ばれる成分が含まれるためだが、種によってにおいを構成する成分が異なるのだ。実際、パクチー臭を出すものもいれば、柑橘系のにおいを出すもの、青リンゴのようなにおいを出すものもいる。
たまに不快なにおいを嗅ぐことになる覚悟を持てるのなら、カメムシたちのにおいの違いを確認してみるのも面白いだろう。
■カメムシが屋内に侵入した時の対処法
屋内でカメムシを見つけた時の対処法をお伝えしよう。
そもそもの話だが、カメムシは常に臭いわけではなく、何か刺激を受けた時ににおいを出す。主に危険を感じた時に防衛反応として、臭いにおいを出したり、仲間に危険を知らせているのだ。
なので、このあたりの知識があれば家の中でカメムシを見つけても慌てる必要はない。危険を感じさせない限り、臭いにおいを出すことはないからだ。カメムシが屋内に侵入した場合は、カメムシの進行方向に手(もしくは紙など)を置いておき、カメムシが乗ってきたらひょいと外に出してあげるだけで終わり、である。カメムシの背後からつまもうとすると、警戒させてしまうので注意しよう。
慣れてしまえば、僕のようにカメムシを外に逃す前に一枚シャッターを切るほど余裕が持てる。
ただし、集団でいるときは対処が難しい。数多くいるカメムシの一部を驚かしてしまうと、一つの爆弾の火が周りの爆弾に引火するように、たちまち臭いにおいを発してしまうからだ。だからカメムシの群れがいるときは、一匹ずつ個別に対処する必要などの工夫が必要だろう。