■湿原と雲海が広がる幻想的な世界

苗場山山頂から見る迫力のある雲海

 いつの間に坂を登りきったのか、気づくとひらけた見通しのよい場所を歩いている。木道を歩く登山靴の足音が耳に心地よく、次第に湿原が見えはじめる。

 目の前には果てしない湿原地帯が続き、ここが本当に山頂なのかと思うような不思議な世界だ。どこまで歩いても湿原に終わりがないかのような錯覚に陥る。

 湿原の先には大きな雲海が広がり、こちらに迫ってきそうな迫力だ。湿原と同じ高さに見える雲海は、地面に雲が乗っているようにも見える。

●山頂に着いたら湿原を散策

苗場山山頂に広がる広大な湿原

 今晩の宿である苗場山頂ヒュッテに荷物を預けたら、広大な湿原を散策しに行こう。身軽になった体で思う存分歩いていける。

果てしなく続く、苗場山山頂に広がる湿原

 果てしなく続く湿原にワクワクが止まらない。湿原の先に見える雲海まで歩いてみたいと思ったが、歩いても歩いても終わりが見えない。残念だが雲海まではたどり着けなかった。

 散策が一通り終わったら、湿原を眺めながらコーヒータイムを楽しもう。苗場山頂ヒュッテは小屋の外なら火を使ってもいいので、ルートの途中で汲んだ湧き水をガスバーナーで沸かしてコーヒーを淹れる。雄大な湿原を眺めながら飲むコーヒーは格別だ。

●雲海に浮かぶ朝焼け

日が昇りはじめた苗場山の山頂

 寝る前は山小屋のスタッフに日の出時刻を確認してから寝よう。せっかく山頂に泊まるのだから、山頂からの日の出はぜひ見てほしい。

 日の出前は薄暗く、空は薄いブルーに覆われてその光景も美しい。太陽が昇りはじめるとブルーの中にオレンジ色が交じり、2色に交差する空の景色に眠かった目も覚めていく。

苗場山山頂眼下に広がる雲海の中から昇る朝日

 太陽がほとんど姿を現した頃には、辺り一面がオレンジ色に染まった。空に浮かぶ雲も湿原も、太陽のオレンジ色を吸収したかのように同じ色をしていた。

 遠くに見える雲海がより一層、幻想的な世界を演出する。遮るものが何もない広大な湿原だからこそ見られる、雄大な朝焼けだ。

 自分自身の体もオレンジ色に染まる、心が震えるような感動の光景だった。今まで見てきた朝焼けのなかでも特別深く胸に刻まれた。

■時間と共に姿を変える苗場山の景色

 日帰りで行けば見られるのは昼間の景色だけになるだろう。しかし、苗場山は朝夕の景色も幻想的ですばらしい。時間帯によって違う光景を見せてくれる魅力的な山だ。

 山頂が広大な平らな地形をしている特異な山だからこそ見られる、特別な景色がある。ぜひ一度は1泊登山で苗場山を訪れてほしい。 

 

【苗場山祓川ピストンコース<1日目>】所要時間
祓川登山口駐車場 (0:00) → 和田小屋 (0:20) → 神楽ヶ峰(2:50) → 雷清水 (3:10) → 苗場山頂ヒュッテ (4:10)
【苗場山祓川ピストンコース<2日目>】所要時間
苗場山頂ヒュッテ (0:00)→ 雷清水 (0:45) → 神楽ヶ峰(1:15) → 和田小屋 (3:05) → 祓川登山口駐車場 (3:20)
歩行距離:約13.9km
累積標高差:登り 1,248m、下り 1,248m
合計所要時間:7時間30分

●【MAP】苗場山 祓川登山口 駐車場

※この記事の情報は2024年10月現在のものです。内容が変更される場合もありますので、最新の情報はリンク先のHPでご確認ください。