■どこを向いても絵になる、白馬村の冬
小雪でやきもきしていた雪国も新しい年になって、まとまった雪が里にも降り積もり、あたりを白く染める雪景色の日常がはじまった。
一面が銀世界になった白馬村は冬本番の様相になり、村内の5スキー場はたいへんな賑わいを見せている。スキー・スノーボードを楽しみに来る国内のユーザーだけでなく、世界各地から上質な雪を求める人で連日にぎやかだ。
一方で白馬村は、滞在してゆっくりと冬景色を味わう人や、麓の斜度のゆるいコースやロケーションを満喫したいという、冬初心者も増えている。
雪が降れば、たった1日で景色が一変し別世界になる雪国。凍てつくような寒さのなか空気は澄みわたり、厳冬期に降り積もる雪は真綿のようにフワフワ。足跡のない雪の上をキュッキュッと音を響かせながら歩くのは、新鮮な気分だ。
非日常的な光景は毎日それを見ている人をもハッとさせる。子どもの頃からこの景観が当たり前だった上村愛子さんもそのひとり。世界各地の雪山を滑っていたモーグル選手引退後は、育った白馬村の美しさを改めて感じ入ったという。
そこで、今回は写真を撮るのが趣味という上村愛子さんに雪化粧をした白馬村で好きな場所を巡ってもらった。美しい冬の白馬村を彼女の視点から写真で切り取ってもらおう。
■早起きは三文の徳。三日市場エリア
白馬村は東西を山に挟まれた谷状の地形だ。西側には3,000m近い北アルプスがそびえたち、日が出る前には山肌に光があたりはじめ、オレンジ色に染め上げるモルゲンロートが美しい。
斜めに差し込む朝の柔らかな光が印象的とあって、6時30分に堀之内にある無料の駐車場「さんさんパーク」に顔を見せた愛子さん。上空に目を向けるとちょうど真上を境に東は雲が薄くなり赤みを帯び始め、西の山には雲がかかっていた。空が薄い赤色と深い蒼色に二分されている。視界のいい場所を探して少し移動し、三日市場地区の道路脇に車を停めてあたりを散策してみた。
スキー場のある北アルプスの山々を厚い雲が覆っているが、周辺は雲が晴れて明るくなってきた。愛子さんは愛用のキヤノンのミラーレス一眼をあちこちへと向け、シャッターを切っていく。
上村愛子「雪があって朝日が差さないと、朝のこんな色は見えません。雲も、塩梅よくって言ったら変ですけど、中腹にちょうど雲がかかり、早起きをしないと見えない景色に今日も会えたっていう感じで、撮ってました。雪景色の広がっているところに、こんなにたくさんの車が、朝早くから、雪に、白馬に、吸い込まれていくような風景は、山やスキー場が映っていなくても白馬らしいと思いました」
と愛子さん。長年白馬に住む愛子さんもカメラを向けなかったら気づかなかったという街灯についたストックのモニュメントや、刻一刻と景色と色合いが変わっていく朝の様子は、まさに早起きは三文の徳。新たな発見もある。雪景色のなかをスキー場へと向かう等間隔の車を眺めながら、次の場所へと移動した。
●【MAP】三日市場
■滑らない人の気持ちが少しわかった気がした。エイブル白馬五竜スキー場
朝イチのスキー場は山頂へ向かう人でごった返していた。エイブル白馬五竜スキー場のテレキャビンに並ぶ長蛇の列を横目に、エスカルプラザの正面にこの冬から営業を始めた「ai coffee HAKUBA」で暖をとりながら、人が少なくなるのを待つことに。
白馬五竜スキー場の麓には薄く靄がかかっているが、ゴンドラに乗って山頂を目指した。
上村愛子「スキー場は滑りに行く場所なので、カメラひとつだけでスキー場へ行くのはかなり新鮮ですね。滑りに行くだけなら、行った先で綺麗な景色を探そうっていう視点にまずならないです。
だから、カメラを持って普段の格好で上がっていったことで、雪山にいるスキーヤーやスノーボーダーのウエアのカラフルさにも気づいたりとか、雲が動いて山がパーッと見える感じなど、白馬へ遊びに来た人の気持ちをほんの少しだけ疑似体験できたように感じます。
ゴンドラに乗ってスキー場の山頂へ上がってみて雲がかかってても、ちょっとした隙間から見えるアルプスでもすごく楽しいだろうなとか、驚くだろうなとか。そういう気持ちになれて楽しかったです。写真を撮りに雪山へ上がるのもいいですね。
雲が晴れるのを待ちながら、ゴンドラ山頂駅に1時間半もいるって、スキーをしていたら絶対無理、笑。だから、それ自体が新鮮で、天気や景色を待ってる間にいろんな話できるのも意外と面白いなって思いました。
スキー場のゴンドラは滑る道具や格好じゃなくても全然気軽に行けるので、標高を上げて雪山にもうちょっと近づいたら面白いと思います」
●エイブル白馬五竜スキー場
長野県北安曇郡白馬村神城22184-10
0261-75-2101