■東山から見る山々の景色こそ「これぞ白馬」
白馬五竜スキー場で山を間近に感じたら、今度は山の全景を眺めようと東側へ向かった。
白馬三山を収める撮影スポットとして有名な松川には、山側から全部で3つの橋がかかっている。愛子さんのお気に入りは一番東側。山からもっとも離れた松川大橋だ。
ここは大型車の往来が時々あるが、基本的には車の出入りが少ない。白馬三山をはじめ、唐松岳や五竜岳が一望できる絶景ポイントだ。
続いて向かったのは愛子さんもよく足を運ぶというハイランドホテル周辺からの景色。ここはJR白馬駅から徒歩で15分ほどにあり、散策しながら写真スポットを目指すのにちょうどいい。駅から向かう道は緩やかな坂道になっており、選手時代はトレーニングとしてここを走って登ったという。いまは彼女の散歩道だ。
上村愛子「白馬らしさっていうと、すごく広い山の写真ですね。今回は雲がかかっていたんで、ピンポイントでしか撮っていないんだけど、『白馬だな』って思う景色は、やっぱりあの景色なんですよね。だから、東から見る北アルプスは外せません。
今回もできれば、白馬三山(白馬岳、白馬鑓ヶ岳、杓子岳)がしっかり映って欲しかったけど、そうならなかった。けれども、雲がこうかかってたり、晴れてる山も含めて、白馬ってこういう景色があるんだよっていう頭に切り替えました。
白馬に来てもらって、ちょっと雲がかかってましたとか、白馬岳は今日も見えなかったねって言ったときに、白馬はまた見に行きたいなって思ってもらえる場所だと思うんです。
実は真冬にピーカンってあんまりないんですけど、そうやって奥にある景色をちょっと想像しながら、次こそは晴れを当てようじゃないですけど、なにかそんな気持ちになってもらえると嬉しいですね。
東から見る山々は、私がとにかく大好きな景色です」
●【MAP】松川大橋
●白馬ハイランドホテル
長野県北安曇郡白馬村北城21582
●【MAP】白馬駅
■一眼カメラを手にしてから、白馬の良さをもっと感じるように
愛子さんが最初に写真を撮り始めたのは高校生時代から。“写ルンです”を片手に仲間との記念写真を中心に思い出を残そうと撮っていた。どんどん溜まっていく写真を目の前に「ずっと記念写真が撮りたいわけじゃない」と、風景写真や建物など自分の好きなものを撮りはじめた。
今回は降雪のあった翌日に愛子さんを誘って白馬村の冬の美しい景色を巡った。モーグルの選手を引退したあとも、趣味で続けていたカメラに思う存分集中できるようになってから、さらに撮影にハマっていったという愛子さん。日常的に写真を撮っている彼女にとって、日々変わる白馬の景色に飽きることはないそうだ。
「InstagramなどSNSが一般的になり、撮った写真を人に見てもらいたいという感覚が生まれてから、日常的に見ていた白馬の見方が、すこし変わってきたかもしれませんね。
今日も撮っていて、来た人が見たら絶対綺麗って思うだろうなとか、雲がたくさんあったら、アルプス見えないけど、足元を見たらすごく美しいなと思うものがやっぱりあるなとか。いままでは広く白馬を見てたのが、こう、点になってきてるかもしれないです。狭い視野も面白くなってきてるのかもしれません。
話がすこし飛んじゃうのですが、私の母が水彩画を習っていたときに、山の画を描く先生から聞いた話です。山の色を塗るときは、例えば雪山なら白を、春山なら薄いグリーンを塗っちゃいがちだけど。本当は、降り積もった雪の色はそれぞれ違うし、山の中にある木々は芽吹いている実があったりで絶妙に異なると。
その話を聞いてすごく影響を受け、これまで以上に景色をマニアックに見るようになりました。
近づいたり、遠ざかったり、いろんな角度から対象になるものを見るのは楽しいし、自然現象の営みを感じるのも好きです。今日も気温がすこし高いから雲が上がって霞みがちだったんですけど、それはそれで見ていると面白くて。気温が上がれば雪質が変わってきたり、朝の放射冷却で水分が飛んでサラサラの雪になったりなど。
青い空、白い雪っていうはっきりした冬景色も好きなんですが、写真を人に見てもらうことが増えたぶん、わかりやすい画と私が好きな視点で切り取った写真も同時に楽しんでほしいなと思います」
上村愛子さんと白馬の冬景色を切り取ったのは大晦日の直前。現在はコンスタンスに降る雪のおかげで道路も雪に覆われた真冬の景色だ。上村愛子さんのように、自分だけの白馬の景色を探しに、村内を巡ってみるのはどうだろう。
上村愛子 Aiko Uemura
長野県白馬村育ち。2008年日本人モーグル選手として初のFISワールドカップ総合優勝、2009年世界選手権優勝、冬季五輪5大会連続出場と数々の実績を残し、2014年4月に選手を引退。現在はTVスポーツ関係のコメンテーターをはじめ、雪やスキーをベースに活動の幅を広げながら、白馬村を中心に雪山を滑り続ける。2022年は自身初となるイラストを手掛けた絵本が発売。2023年11月には白馬村観光大使に任命された。
●白馬村観光局
長野県北安曇郡白馬村北城7025
TEL 0261-72-7100
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