「昨年は山で外国人をよく見かけたなあ」と、筆者と同じように感じている人も多いのではないだろうか。装備が軽装だったり、服装が適していなかったりと、彼らがメディアで取り上げられることも多かったが、もちろん外国人登山者全員がそうではない。
筆者は登山歴9年、年間40回山に登る。山で出会った外国人たちは純粋に山を楽しんでおり、かつ山を恐れていた。そんな外国人と遭遇した「クスッ」と笑えて、心温まる2つのエピソードをこの記事で紹介したい。
■美意識高い外国人、石鎚山での笑える遭遇エピソード
日本百名山の一つ、四国「石鎚山(いしづちさん)」の山頂「天狗岳」で出会った美意識の高い外国人男性のエピソードである。
「石鎚山」は、愛媛県西条市に位置する標高1,982m、西日本最高峰の山でロープウェイを利用すると標高1,300mまで一気に昇れ、登山道も整備されているので、多くの登山者に人気がある。
その日は9月下旬だというのに、日差しが強く暑い日であった。3連休ということもあって、山頂は多くの登山者で賑わっていた。
天狗岳の山頂に、一際目立つ若い外国人グループの姿があった。なぜならそのうちの1人、長身の男性が上半身何も着ていなかったからだ。登山中、薄着の外国人は時折見かけるが、上半身何も着ていない外国人を見かけることはまれだ。身長差がある男性2人と女性1人の3人グループで、女性の完璧なメイク姿にも筆者は驚いていた。3人は楽しそうに写真を撮り合い、長い間そこではしゃぎまくっている。写真を撮ってほしいと頼まれたのをきっかけに会話が始まる。
3人は韓国出身。そう聞いて一緒にいる女性が完璧なメイク姿で登山をしているのも腑に落ちた。韓国の女性は美意識が高いイメージが筆者にはあるからだ。
彼らは大阪に住んでおり、石鎚山が素晴らしい山だという噂を聞き、四国まで足を運んできたそうだ。3人で山頂に到達した感動を分かち合っているところに筆者たちが遭遇したのだ。その楽しそうな姿をみると、こっちまで楽しくなってきてしまうほどだった。
時刻は15時前、最終のロープウェイに間に合うように、筆者たちは彼らに別れを告げて下山を始めた。下山途中、後ろからやってきた若いグループに道をゆずろうと、登山道脇で待機する。友人が「あっ」と驚いた顔をして私に目配せする。振り向くと全身黒ずくめの長身男性の姿が目に入った。黒い服、黒い帽子、黒いサングラス、黒いフェイスカバー、黒い手袋と一切肌を見せない完璧な日焼け対策。しかし、友人が私に伝えたかったのは黒ずくめの長身男性と一緒にいる2人の登山者の姿だった。そこにいたのは、天狗岳で出会った完璧メイクの女性と背の低い韓国人男性だ。
石鎚山は年間を通して晴天日が約31日ほどしかないと言われるくらい曇天日の多い山であるが、その日、山頂から見えた景色は息を呑むほどの絶景であった。その風景は、美意識の高い韓国人男性にとって解放感をもたらしたのかもしれない。私は友人たちと「クスッ」と笑いながら顔を見合わせた。上半身裸と黒ずくめ、両極端な姿がなんとも面白い外国人登山者だった。