山での出会いは「一期一会」である。それは景色であったり、人との出会いであったり様々だ。同じ季節に同じ山へ登ったとしても、二度と同じ景色には巡り会えない。
2023年、1月から10月まで40以上の山行を経験した登山歴9年の筆者が「一生に一度の出会い」にフォーカスして、今年大きく感動した山ベスト5を紹介する。
■2023年 第1位【竜ヶ岳】広大な稜線と渓谷のラグーン
筆者が選んだ2023年の第1位は、遠足尾根から山頂へと続く広大な稜線と、美しいラグーンのような滝を持つ「竜ヶ岳」である。
竜ヶ岳は三重県いなべ市にある地元のシンボル「鈴鹿セブンマウンテン」の一つ。標高1,099mの低山でありながら、遠足尾根から竜ヶ岳山頂までの稜線は広く美しく、アルプスを彷彿とさせる山歩きが楽しめる。
さらに石榑峠(いしぐれとうげ)から宇賀渓(うがけい)キャンプ場へと続く谷ルートでは、まるでラグーンのような美しい滝に出会える。深い谷筋に光が差し込んで水面が透き通って見える景色は、まさに一期一会の美しさであった。
竜ヶ岳は関西からアクセス良好で、高速道路を使えば日帰りで楽しめる。モコモコとしたシロヤシオの形がまるで羊のように見えることから「白羊」と呼ばれる花が咲く5月は、全国から登山者が押し寄せるほど人気の季節だ。
今回筆者が歩いたのは所要時間、約5時間30分の以下のルートだ(休憩含まず)。
宇賀渓キャンプ場 → 遠足尾根 → 竜ヶ岳山頂 → 表道登山道 → 石榑峠 → 長尾滝 → 五階滝 → 魚止滝 → 宇賀渓キャンプ場
特に石榑峠(いしぐれとうげ)から滝をめぐる谷筋ルートは、長いハシゴや暗く細いトラバース道が多いので十分に注意して歩こう。初級者の方は滝はあきらめて遠足尾根をピストンするか、上級者の方と一緒に歩くことをおすすめする。
●【MAP】宇賀渓キャンプ場
アクセス:新名神高速道路「菰野(こもの)IC」出口より一般道を約14km走る
■2023年 第2位【白山】山頂で見たドラゴンアイ
第2位は、白山の最高峰「御前峰(ごぜんがみね)」から見えた「ドラゴンアイ」と呼ばれる、雪解けの池の景色である。
白山とは石川、岐阜、福井の3県にまたがる、標高2,702mの最高峰「御前峰」を中心に構成されている峰々の総称で、日本百名山にも数えられる。御前峰から池を眼下に見下ろしたとき、神秘的な瞳と目が合った。池の雪解けの様子がまるで竜の瞳に見えることから、名付けられた「ドラゴンアイ」である。
「ドラゴンアイ」を見るにはタイミングが重要だ。毎年同じ時期に登っても必ず出会えるとは限らない。その年の積雪量や気温に左右されるからである。まさにこの日、竜の瞳と目があったのも一期一会である。
チャンスとしては、7月の白山開山直後がおすすめだが、ドラゴンアイが見れなくても「花の百名山」としても有名な白山は高山植物の花畑を歩くだけでも十分楽しめる。
白山は体力があれば、日帰りも可能だがゆっくりと景色を堪能できる1泊2日の山行がおすすめである。
所要時間は日帰りの場合、約8時間(休憩含まず)。
別当出合(べっとうであい)登山口 → 砂防新道(さぼうしんどう)→ 甚之助避難小屋 → 黒ボコ岩 → 室堂ビジターセンター → 御前峰 → 御池巡り→ 室堂ビジターセンター → 往路を戻る
●【MAP】別当出合登山センター
アクセス:開山期(7月から10月中旬)の週末はマイカー規制のため、市ノ瀬ビジターセンターより約6km区間は有料シャトルバスを利用