■野生動物と共存できる未来のために

視線を感じて顔を向けるとカモシカが立っていました。クマじゃなくてよかった

 決して仲良く生きることだけが共存ではありません。クマを始め、野生動物とは距離を置くことこそが必要だと思っています。しかしフィールドにおいて明確な境界線がある訳ではありません。

 距離感と緊張感をお互いに保つためにはお互いの配慮が求められます。万が一、人間が襲われて事故に繋がれば、加害動物の駆除という流れになってしまいます。そんな不幸を避けるためにも極力近距離で出会わないよう、身を守る術を用意しておくことが必要だと感じています。

 アウトドアカメラマンとしての職業、さらに登山道整備や遭難救助の仕事の関係上、年間を通じてフィールドに赴く筆者にとって、クマへの恐怖は常にあります。しかし、山の危険はそれだけではありませんし、常に緊張感を保つ必要があります。恐れはありますが、クマがいないような森、山になって欲しくはありません。クマが生きていけるということは、豊かさがまだ残っている証拠でもありますから……。