夏は暑いので低山には魅力をあまり感じず、標高の高い山や高原に目が向いてしまう登山者も多いのでは。しかし、アルプスなどの高山の紅葉シーズンが終わると、地元の低山の紅葉に関心が移ってしまうものだ。

 筆者は若いころ、地元の山に全く興味がなかった。低い山のどこがいいのかと思っていたが、家族が増え遠出も自由にできなくなってからは、仕方なく短時間で登ることができる地元の山に日帰りで登るようになった。

 すると、「アルプスの一般的なコースより難易度が高いのでは?」と感じることもしばしば。低山を舐めていたが、なかなかどうして、ローカルな低山は曲者だった。この記事では、低山だから軽装で大丈夫だろうと、紅葉登山を気軽に考えている方に向け、秋の低山のリスクについて紹介する。

■低山とはどんな山?

 はっきりとした定義はないようだが、一般的には「標高1,000m未満」を低山と呼ぶらしい。

 記事内では、1,000mを少し超える山も含めて低山としている。ローカルな地元の山などを指し、「○○県の山」というタイプのガイドブックに記載される、登山口から3時間程度あれば頂上に立つことができ、体力的にも技術的にもハードではない山をイメージしてほしい。

■【その1】秋に限らず、低山登山は道迷いに注意

群馬県の三ッ岩岳(標高1,032m)頂上からの眺め。この山は何度も登っているが、上り下りの両方で道迷いを経験した

 標高599mの高尾山は、代表的な低山。全国に名が知られ、登山客もとても多い。しかし、全国には有名ではないが、地域で愛される低山もたくさんある。入山者もさほど多くはなく、静かな山歩きができるのも魅力だ。しかし、そのような入山者が少ないローカルな低山こそ、道迷いへの注意が必要だ。

 道迷いが多くなる理由としては、

・道標が少ない
・登山道がはっきりしない(林業用の道と区別がつかなくなることも)
・SNSなどでも情報が少ない
・災害などで道が荒れ、通れなくなっている場合もある
・木につけられた登山道を示すピンク色のテープが古くなり、見落としやすい
・登山道が尾根道でも樹林の場合が多く、見通しが悪く現在地の把握が難しい

 筆者は北アルプスの一般的な登山道で道迷いを経験した記憶はないが、マイナーな低山では分岐で悩むことが多い。気づくと「ここは絶対登山道じゃない」というような斜面を歩いていたことも。

 幸いどのケースもすぐに登山道に戻れたので遭難には至っていないが、ヒヤリハット事案は多い。たくさんの登山者がひっきりなしに歩き、道標や登山道も整備された北アルプスに比べ、道標が少ない静かな低山のほうが難しいと感じている。