クマによる人的被害が過去最悪のペースで増え続けている。
11月1日、環境省自然環境局は10月末までの速報(暫定)値で、被害件数は164件、被害人数は180名と発表した。これまでもっとも多くの人的被害が出たのは2020年度の143件158人だったが、今年度の集計ではすでにどちらとも大きく上回ってしまっている。
今年はブナの種子であるドングリが凶作のため、人里に姿を現わしているともいわれるが、別資料では地域により引き金が異なるとの報告もあり、一様にはいかないようだ。いずれにしても今秋のように市街地や民家の庭先など、人の生活圏に出没するニュースが連日流れることは、これまでになかったことだ。
冬眠までは厳重注意が呼びかけられる一方で、気象庁発表の1か月予報によると、しばらくは平年より暖かい日が続く見込みだ。アウトドアでクマに遭遇することは珍しいことではないが、今年の長い秋の間に不意に出合う確率は、いつもに比べて高いと言わざるを得ない。いまだに分からないことの多い動物でもあるクマが現れたら、どうすればよいのだろうか。
BRAVO MOUNTAINではこれまで、各地のライター陣による体験を中心に、クマに関する記事を掲載してきた。今回はその中からいくつかピックアップしてお届けする。対処の参考になれば幸いだ。
■「冬眠明けのクマに会ったら…… どうする?」 上高地ビジターセンター講習会で学ぶ、登山&キャンプでの「4つの必須対策」とは?
●https://bravo-m.futabanet.jp/articles/-/123679
ツキノワグマの生息地である上高地では、環境省発行の「上高地地域のツキノワグマ対策実践マニュアル」をもとに対策がとられている。
一帯の自然環境の紹介と研究や利用案内を行う「上高地ビジターセンター」で開かれている講習会のレポートだ。受講時期は春だが、クマの習性と出合った際に取るべき行動についてまとめられている。
■牛65頭を襲った忍者ヒグマ「OSO18」も話題! 登山中の「クマ対策」と遭遇時の「絶対NG事項」
●https://bravo-m.futabanet.jp/articles/-/121920
2019年から今年8月に駆除されるまで、北海道東部の標茶町や厚岸町の酪農家に大きな被害を与えた「OSO18(オソジュウハチ)」。アウトドアでの遭遇についても関心が高まる中、まず出合わないためにできること、至近で鉢合わせてしまった際の対応について書かれている。被害増大の一因ともいわれる、ハンターの減少についても触れている。
■クマ出没注意! 日本最北の動物園「旭山動物園」にオープンした「えぞひぐま館」から学ぶ、人間と動物の「距離感」と「共存」について
●https://bravo-m.futabanet.jp/articles/-/121920
2022年4月下旬にオープンした旭山動物園の「えぞひぐま館」では、母熊が駆除されたことで保護された「とんこ」が飼育されている。園内の手作り看板も紹介し、人との共存について考えるきっかけとなる様子が伝わる。旭山動物園が実践している「行動展示」を見れば、ヒグマの大きさや力強さを実感することができるだろう。
■【クマを知る】「山であいたくない動物」のトップ! クマ科の8種類を分類してみよう
●https://bravo-m.futabanet.jp/articles/-/124178
一般的にクマと呼ばれる動物は、3種の亜科と5つの属に分類される。そのうち日本に生息するのはヒグマとツキノワグマの2種類だが、どちらも同じクマ属に分類される。分布がユーラシア、北米、南米、南極の各大陸に限られ、8種類しかいないクマについて解説したコラム。
■アウトドア「イヤな生き物」ワースト5対策! 「登山歴15年・元キャンプ場スタッフ」経験談に学ぶ「常備アイテム」と予防法
●https://bravo-m.futabanet.jp/articles/-/123910
元キャンプ場スタッフがフィールドで頻出する野生動物や害虫について、被害を少なく抑える方法と緊急の対処について実体験をもとに解説している。携行していると役立つアイテムも紹介されていて、日頃の心構えについて確認できる内容だ。
環境省 自然環境局「クマに関する各種情報・取組」●https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/effort12.html
環境省は、重要なことはクマとの距離を確保することだと述べている。各自治体が出す出没情報などを事前に確認するなど、回避につながる行動がとれるよう、これまで以上に気をつけたい。
なお記事中の情報は掲載時のものなので、更新状況は各HPで確認するようにしてほしい。重大な事故を未然に防ぎながら、秋のアウトドアシーズンを楽しみたい。