連日報道され続けるクマ関連のニュースに、いつもは気に止めない人もさすがに注目せざる負えない2023年シーズン。環境省が公開する「クマ類による人身被害について(速報値)」でも、10月末暫定値で被害件数164件、被害人数180人、死亡人数5人と昨年度の71件の2倍以上の被害件数となっている。

参考URL:環境省 クマ類による人身被害について(速報値)

 エサとなる木の実の凶作が影響しているといった報道もあるが、実際クマの棲みかである山で日々活動している人たちは、この状態をどのように感じているのだろうか。今回は、毎シーズン多くの登山者に山の素晴らしさを伝えている現役山岳ガイドの方に「現代のクマ」についてお話を伺った。

■クマが人を恐れなくなってきている現状

人々の生活変化によるルール変更などがクマ増加に与える影響も大きい(撮影:佐藤 麦)

 「50年以上山を登っていますが、クマに襲われるとか、正直そこまで恐い思いをしたことはありません。昔は「春クマ駆除」といって猟銃で駆除されていたため、クマも人間を怖がっていましたが、今ではそのようなこともなくなり、人を怖がっていないと感じますね。今年の夏は野営地にクマが毎日出没したため、縦走できずコース変更を余儀なくされた人も多くいました。今年のクマの行動は異常ですが、感覚的にはここ15年くらいでよくクマに会うイメージですね」

 人間とクマとの共存を模索し、これまでバランスを保つために行なわれてきた「春クマ駆除」だが、自然のシンボルであるクマを保護すべきといった機運の高まりや、絶滅の恐れから1990年に廃止されている。それ以降、クマによる人的被害、農作物被害が増えているといった報告もあるようだ。では、山で遭わないようにするためにはどのような対策が有効なのだろうか。

参考URL:「春グマ駆除」廃止でヒグマ増…20年度は農業被害2.5億円、死傷者も

 「ザックに鈴をつけるのが一般的ですが、音が小さいため効果は薄いと思います。私は定期的に笛を吹き、クマに自分の位置を知らせています。もし遠くにクマを見つけたら、大きな声を出さないようにして、前を向いたまま遠ざかるようにしましょう」