12月に入っても連日のように報道されるクマによる被害。人間がクマに襲われる事案が立て続けに発生しています。昨今は山奥のみならず、人里付近での散歩中や畑、庭先など生活圏での遭遇が目立つようになっているようです。住んでいる地域によっては、日常のすぐそばにある危険の一つとなっている印象です。
先日、新幹線の車内で“熊撃退スプレー”が誤噴射される事故がありました。実はまさに新幹線の車中でこの原稿を書いているのですが、想像するとゾッとします。なぜなら実際に浴びたことがあるからです。
筆者は山岳や渓流、アウトドアでの撮影に従事する傍ら、登山道整備や遭難救助の仕事にも携わっています。職業柄、以前から本州のツキノワグマ、北海道ではヒグマ、北米ではグリズリーにも至近距離で遭遇しています。以前住んでいた家のすぐ裏に出たこともあります。その中で実際にスプレーを噴射したことは2回あります。初めて噴射した際にはクマを退けることはできましたが、使用に関して注意すべきことを身をもって経験しました。
■熊撃退スプレーは最後の手段!
以前ならあまり知られていなかった“熊撃退スプレー”の存在もだいぶ認知されるようになりました。国内で販売されているものは数種類ありますが、唐辛子の辛味成分であるカプサイシンを濃縮したものを噴射するようになっています。その強烈な刺激によって、人間どころかイヌよりも嗅覚が優れていると言われるクマが逃げていくというもの。商品によって内容量や(有効な)飛距離に若干の差があるようです。
筆者自身は携行するようになって20年ほど経ちますが、クマとの遭遇リスクが高いフィールドでは肌身離さず持ち歩き、いつでも噴射できる心づもりで行動しています。使用方法はシンプルです。安全装置である“セイフティークリップ”を外し、対象に向けてレバーを押すだけです。ただし、最も距離が長いものでも射程は約10m。ほとんどは10m以下です。つまり、もしクマがこちらに勢いよく向かって来たり、気づくのが遅れた場合はチャンスは本当に一瞬しかありませんし、鉢合わせした場合や風向きによっては自分に噴射した中身が返ってくるリスクもあります。“熊撃退スプレー”は最終手段です。まずはクマに出会わないことが一番で、そのための方策を練る方が大事でしょう。
本体には有効期限が明記されていますので、よくチェックしておきましょう。期限の過ぎたものは内容が減っていたり、飛距離が落ちたりしている可能性もあります。また、パーツの劣化による誤作動や液漏れのリスクもあります。いざという時の最後の要ですので、管理には神経質なくらいでちょうど良いかと思います。念の為、自宅での保管やマイカー移動の際にも密封できる袋を2重にして収納しています。
カウンターアソールト(取扱:株式会社モチヅキ):https://e-mot.co.jp/counter-assault/
有効期限の過ぎたカウンターアソールトの処分方法:https://outback.cup.com/dispose_can.html