秋の北アルプスは、山々が赤や黄色に染まり、美しい景色が山一面に広がる紅葉が楽しめる季節。しかし、10月の北アルプスは天候によっては雪が降る日もあり、11月は冬山になるため10月中旬頃、今季の営業を終了する山小屋も多い。

 今回は、天気と山小屋情報をチェックし、防寒装備を備え、新穂高温泉からスタートした1泊2日の秋の双六岳(すごろくだけ)の絶景登山をレポートする。

■「双六岳」槍ヶ岳・穂高連峰の大展望

 双六岳は、長野と岐阜の県境に位置する、標高2,860mの北アルプスの山。なだらかな山容が特徴的で「天空の滑走路」と呼ばれる幅広い稜線から見える、槍・穂高連峰の姿は圧巻である。

 しかし、双六岳までの道のりは遠い。登山口の新穂高温泉(標高1,090m)より左俣林道、小池新道を経由して、双六岳と樅沢岳(もみさわだけ)の鞍部(あんぶ)にある双六小屋までは約7時間半の登りが続く。さらに小屋から山頂までは往復2時間ほどかかる。

 紅葉の時期に訪れる場合、万が一の降雪に備え、アイゼンや防寒具、手袋などの冬装備も必要だ。しかし、秋の双六岳までの登山道では、小池新道の紅葉トンネルや高山植物の草紅葉、鏡池に映る穂高連峰など、この時期ならではの絶景が見られる。

双六岳の幅の広い稜線「天空の滑走路」(撮影:兎山 花)

■小池新道の長い登り

小池新道の紅葉(撮影:兎山 花)

 新穂高温泉から約1時間20分、わさび平小屋に着いた。小屋の前では飲料やきゅうり、トマトが売られている。ここから鏡平山荘までの間にある秩父沢の水場は枯れることがあるので、十分な水分をここで確保しておこう。

 わさび平小屋から約20分で小池新道の登山口だ。ゆるやかな登りの林道歩きが終わると、ここから本格的な登りになり、紅葉のトンネルの中を進む。「鏡平まで500m」という岩に書かれた文字が見えたら、鏡池まであと少しだ。