宿泊が伴う山行や遠距離の移動はなかなかできない……。だから都市部から近く、そしてできるだけ有名な山に登りたい。ここではそんな欲求をかなえる日帰り可能な百名山の中から、比較的登りやすい山々を紹介しよう。
ロープウェイやシャトルバスを使って標高を上げられて、整備された登山道で鎖場や岩場などが少なく、行程時間も5~6時間未満。それでいながら眺望抜群かつ、新緑や紅葉など四季の景色も美しい山をピックアップ。標高2,000~3,000mの山まで、それぞれ個性あふれる山を今年は歩こう。
●日本百名山とは?
随筆家で登山家の深田久弥が、実際に登った山から選んだもの。それらは山岳紀行『日本百名山』に掲載されている。高い山だけが選ばれているわけではなく、山の歴史や個性、品格などを見て選定されている。100座制覇を目指す“百名山ハンター”と呼ばれる登山者もいるほど。
■美ヶ原(うつくしがはら)標高:2,034m【長野県】
歩行時間:3時間00分
技術レベル:★☆☆☆☆ □体力レベル:★☆☆☆☆
美ヶ原は日本百名山のなかでも、珍しく山名に「山」や「岳」など山を表す言葉が付かない。その名の通り、標高2,000mに美しい草原や牧場が広がる場所で、ピークらしいピークを持たずに、名称は高原全体を指している。
美ヶ原はほぼ頂上部の2,000m地点までビーナスラインを通じてクルマで簡単に到着できるため、登山をしなくても楽しめる、観光客にも人気のエリア。
ビーナスライン最標高地点である道の駅・美ヶ原高原からほど近い山本小屋を起点に両側に牧場が広がる平坦な広い砂利道をまっすぐ進む。美ヶ原のシンボルともいえる「美しの塔」が現れる。さらに右手方向に緩やかな勾配を進むと、多数の電波塔が立ち、ホテルがある王ヶ頭に着く。
王ヶ頭はエリア最標高の2,034mで、こちらも展望は抜群だ。ここからやや下った位置に王ヶ鼻がある。ここは北アルプスを正面に見渡す崖の先端という趣で、溶岩台地らしい大きな岩場だ。標高感があり、眺望も見事で、北アルプスの穂高連峰から遠く白馬までが見渡せる。ここを折り返し地点に、帰りはアルプス展望コースと呼ばれる巻き道を通って、登山口の山本小屋へ戻ろう。