宿泊が伴う山行や遠距離の移動はなかなかできない……。だから都市部から近く、そしてできるだけ有名な山に登りたい。ここではそんな欲求をかなえる日帰り可能な百名山の中から、比較的登りやすい山々を紹介しよう。

 ロープウェイやシャトルバスを使って標高を上げられて、整備された登山道で鎖場や岩場などが少なく、行程時間も5~6時間未満。それでいながら眺望抜群かつ、新緑や紅葉など四季の景色も美しい山をピックアップ。標高2,000~3,000mの山まで、それぞれ個性あふれる山を今年は歩こう。

●日本百名山とは?

 随筆家で登山家の深田久弥が、実際に登った山から選んだもの。それらは山岳紀行『日本百名山』に掲載されている。高い山だけが選ばれているわけではなく、山の歴史や個性、品格などを見て選定されている。100座制覇を目指す“百名山ハンター”と呼ばれる登山者もいるほど。

■至仏山(しぶつざん)標高:2,228m【群馬県】

歩行時間:4時間40分 
技術レベル:★★☆☆☆ □体力レベル:★★☆☆☆

 群馬県と新潟県の国境、標高1,400mに広がる本州最大の湿原が尾瀬ヶ原。この湿原を南西端から見守るようにこんもりと立つ山が至仏山だ。エリア最高峰の燧ケ岳(2,356m)と対を成す。

尾瀬ヶ原は木道が延びる雄大な景色

 スタート地点は群馬県片品村戸倉から山岳バス、またはタクシーを利用して鳩待峠から登り始める。鳩待山荘前の登山道からブナ林の緩やかな道を登っていく。しばらく行くと急勾配に変わる針葉樹の森に至り、さらに前を急ぐ。途中右手にできた開けた空間からは至仏山の全容が現れる。小湿原を抜けオヤマ沢田代まで到着すると小至仏山(2,162m)が見える。この先は森林限界の爽快な木道歩きが続く。ここから至仏山頂までは展望も素晴らしく、岩稜帯もあるが、1時間余りの稜線歩きは花畑も広がる美しい景色。

山頂は大きな岩で構成されており、眺めが良い

 至仏山頂上は360度のパノラマが広がる。正面に存在感ある燧ケ岳、遠く白根山、谷川連峰の峰々、下方に尾瀬ヶ原が広がる眺望は見ごたえあり。山頂部からこれらの景色を楽しみながらのランチタイムはオススメ。展望を楽しめたら下山は来た道をそのまま引き返す。なお、山頂から尾瀬ヶ原側にも高天原登山コースがあるが、下りは禁止となっている。