■ミツバチの引越し!「分蜂(ぶんぽう)」

当初の大騒ぎからやや落ち着きを取り戻してきたミツバチたち

 この一連の大騒ぎは、実は、ミツバチの引越しなのだ。春になり、新しい女王蜂が生まれると、その母親は、働きバチの一部を連れて巣を離れる。人間ならば、実家を出ていくのは子どもだが、ミツバチの場合は親が家を出ていくというのがなんとも興味深い。引越しをする途中での仮住まいが、今回見ることができた一時的な固まりで「分蜂(ぶんぽう)」と言う。

 ということは、近くに元々あった巣があるはずだ。たまたま近くを通りかかった農家の方に尋ねると、200mほど離れた場所で養蜂をしているという。早速向かってみると、そこにはたくさんの養蜂箱が整然と置かれていた。

20個を超える養蜂箱がきれいに並べられていた

 一番手前の養蜂箱を望遠レンズ越しに見てみると、ミツバチたちが元気に出入りをしている。集めているのは、近くにたくさん咲いているシロツメクサやアカツメクサのいわゆるクローバーの蜜だろうか。それとも咲き始めたニセアカシアの蜜だろうか。

養蜂箱の中には、ハチミツがたっぷり詰まっているはずだ

 筆者が見たのは、ここの養蜂箱から新たな居場所を求めて飛び立っていった母親女王蜂の集団だったのだろう。養蜂家の方々としては、分蜂した集団を捕獲して自分の養蜂箱に移したいはずだ。そこで、その場で地域の養蜂協会に電話をしたのだが、残念ながら休日のためか繋がらなかった。

 再び、先ほどの場所に戻ると、ミツバチの集団はさらに形を変化させていたが、とりあえずこの桑の木という一時的な引っ越し先が決まったことで、ホッとしたのだろうか。風景が霞むほどたくさん飛んでいたミツバチたちは、木に止まって落ち着き始めていた。

■女王蜂はどこに?

何重にもなっているミツバチたち。女王蜂を守っているのだという

 激しく飛び回るハチも少なくなり、落ち着いている様子なので、比較的近くにまで寄ってみることにした。そうなると気になるのが、女王蜂の存在である。「ウォーリーを探せ」ならぬ「女王蜂を探せ」とばかりに懸命に目を凝らすが、どれもこれも同じような大きさ・色で全く区別がつかない。

女王蜂はどこにいるのやら

 乾燥しそうになる目をパチパチしながら探していると、目と体の大きい一匹のハチを見つけた。女王蜂というのにはオーラが足りないが、とりあえず証拠写真を撮っておこう。

目が大きくて、左右の目がくっついているミツバチを見つけたが

 帰宅してからネットで調べてみると、それは数少ない雄バチであり、女王蜂ではないことがわかった。雄バチは、女王蜂と交尾することしか仕事をしないらしい。そして、多くの働きバチは全てメスだとのこと。人間にとって、いろいろと考えさせられるハチ社会である。

 結局、残念ながら筆者には女王蜂の存在を確かめることはできなかったが、「分蜂」という貴重な瞬間に立ち会うことができたのは幸運だった。

 母親女王蜂の集団は、一時的な引っ越しを経て、これからどこに向かうのだろうか。無事に新たな住まいを見つけられることを願おう。

【注意】分蜂をしている時のミツバチは、穏やかでほとんど刺すことはないそうだ。今回の取材にあたり、筆者の顔の周りをしつこく飛び回るミツバチがいたが、ハチを刺激しない対応を心掛け、安全に十分配慮した。あくまでも「分蜂」という状況下での取材であることを改めてお知らせするとともに、読者の皆さんが野外でハチに出会った時は、近づいたり驚かせたりしないようにして十分気をつけてほしい。