■手間暇はお茶の価値を高めるチャレンジ

 自然仕立て茶園の手摘みも、萎凋(いちょう)も信じられないくらい手間がかかる。備前屋の代表、清水さんは狭山茶の未来について、「スケールでは静岡や宇治にはかなわない」としながらも「狭山には品種の多さ、気候、土壌、全てに他の地域にはないよさがある。後継者問題もない」と明るく前を向く。清水さん自身もまだまだ後進にまかせず、チャレンジを続けていくつもりだという。

茶を育てるもの、届けるもの、それぞれのチャレンジは続く

 私たちが訪れた日は茶摘み開始の直前だった。数日後には茶摘みのスタッフで賑やかになり、摘み取られたばかりのフレッシュな茶葉の香りでいっぱいになっているはずだ。東京への帰り道に他の茶園も訪れた。茶摘み目前の茶園が広がっている。このあたりの茶園は機械で摘み取られる。それぞれにそれぞれの茶葉の魅力が宿っている。もう少ししたら“おちゃらか”にも各地から新茶が届くはずだ。それらがどんな香りを放っているのか。そんな想像をしながら、私たちは茶園を後にした。

入間市にある狭山茶の茶園。奥多摩や秩父の山々を背景に広範囲に茶樹が広がっている

 

写真/冨田望    編集協力/セトオドーピス、田村広子