■暖かな日差しを浴びながら山頂を目指す
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この日は、気温20℃を超える4月初旬とは思えない汗ばむ陽気。突然、前方に黄色い影がすっと動いた。ギフチョウだ。じっと動かず、自分の気配を消す。すると、近くのタチツボスミレに止まった。後翅(こうし)の赤とオレンジ色が目に飛び込んでくる。息をひそめながらそっとシャッターボタンを押した。
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さらに、スギ林の中を進む。午後の斜めからの日差しは、垂直に伸びる幹の間を抜けて登山道を明るく照らしてくれる。
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と、ここにもギフチョウが。活発に飛び回って少し疲れたのだろうか。スギの枯葉の上で翅( はね )を休めている。
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さらに進んでいくと、急な階段が出てきた。もうギフチョウを十分堪能したので、再び「山頂まで行かなくもいいんじゃないの? 」という甘いささやきが頭の中を巡るが、山頂もギフチョウ出現ポイントの一つ。もうひと頑張りすることにした。
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階段を登り上げると、ほどなく山頂に到着することができる。日当たりがよくベンチもあり、休憩場所としては最高だ。
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いつもはにぎわっている山頂だが、この日は遅くなってしまい、ギフチョウねらいの人が一人いただけだった。声をかけると、「今日は、気温が高すぎてギフチョウが活性化していて、飛んでいるだけで止まってくれない。もっと気温が低ければ日向ぼっこをするためにベンチにも止まるのに」と嘆いていた。周りを見回すと、確かに2匹のギフチョウが休むことなく飛び回っていた。
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結局、登山口、中腹、山頂と、石砂山全山でギフチョウを観察することができた。かなりの数が生息しているのだろう。
■真珠のような卵を発見!
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ギフチョウの幼虫は、カンアオイの仲間を食べて育つ。そのため、成虫はカンアオイの葉の裏に産卵をする。この日も、歩きながらカンアオイの葉を何度となくめくってみたのだが、卵を見つけることができなかった。まだ、成虫になって日が浅いため、産卵には至っていないように思えた。しかし、他の方に聞くと、この日、産卵しているところを見たという。下山後、少し移動した場所で改めて探していたところ、パステルグリーンに輝くギフチョウの卵を見つけることができた。思わず一人歓声を上げてしまう。それくらいうれしい発見だった。
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絶滅に瀕している藤野町一帯のギフチョウとその生息地は、神奈川県の天然記念物に指定されている。成虫はもちろんのこと、卵・幼虫共に許可なく採集することは禁じられている。改めて言うまでもないが、いつまでもその美しい姿を見ることができるように静かに見守り、観察してほしい。