北海道の玄関口である新千歳空港から西へ、また札幌から南へ約100kmの場所にあるニセコ。

 ここはよく知られているとおり、シーズン中は大陸から吹く冷たい乾燥した空気が、暖かい日本海でたっぷりと水蒸気を含んだ雪雲となり、大量に雪を落とす場所である。1月、2月ともなれば、ニセコ・アンヌプリ山の裾野に広がる、HANAZONO、グラン・ヒラフ、ビレッジ、アンヌプリの4つのスキー場は、降っては積もるというサイクルを繰り返す。日常的にパウダースノーが味わえるため、国内外からスキーヤー、スノーボーダーが押し寄せている。

■ニセコグラン・ヒラフ、春におすすめする理由

山頂部へアクセスできるキング第4リフト。いまでは珍しいシングルリフト。このリフトに乗りたくて訪れる人もいるとか

 パウダーのイメージが定着しているニセコだが、実は春シーズンが面白い。春は降雪が落ち着き、天候が比較的安定しやすいのがメリット。雪が残っているため、滑走範囲も広くロングコースが楽しい。リゾートはパウダーを求めていた人が本国へと戻っていることから、ハイシーズンの混雑した雰囲気は少なく、おおらかでゆっくりと過ごすこともできる。また、真冬に比べて日が延びるため、夕景の中を滑るロケーションも魅力的だ。

 そこで、ここではニセコの4スキー場の中でも最も規模が大きいグラン・ヒラフの春シーズンの面白さを探ろうと、3月のニセコグラン・ヒラフに足を運んでみた。

■春ならではのグラン・ヒラフの楽しみ方

 グラン・ヒラフはニセコ・アンヌプリ山の裾野に広がる4つのスキー場の中では最大の規模をもったスキー場だ。麓にはホテルやコンドミニアム、温泉、レストランなどが立ち並び、にぎやかな街並みが広がる。ハイシーズンは過ぎているものの、海外からやってきた滑り手も多く見かけ、メインストリートのひらふ坂をはじめ飲食店は昼夜を問わず賑わっている。

きらびやかな照明に彩られた店舗が並ぶひらふ坂。日が傾くと、スキータウンを散策する人が練り歩く

 スキー場のベースは標高260m、トップは1,200m。コースは22あり、ゴンドラを含むリフトは13基ある。コースの半分近くは初級者向けとあり、パウダーのイメージが強いスキー場としては意外な数値かもしれない。

 たしかに、緩やかな斜度ながら起伏に富んだゴンドラ乗り場正面斜面や、中腹の森の中を滑る林間コース、見晴らしのよい白樺コースなど、滑走レベルを問わず誰もが楽しめるコースが多いのはグラン・ヒラフの魅力のひとつだ。そのため、テクニックの高い上級者から、仲間内で旅行に訪れた初中級者まで多くの人が楽しんでいる。

ゴンドラ乗り場目の前にある「望羊コース」。初心者レッスンでも使われる緩やかな斜面は、誰もが羊蹄山を眺めながら気持ちよく滑れる

 グラン・ヒラフは極めて危険性が高い場所以外はほとんどを滑走可能にしている。そのため、コースとコースの間をロープで規制している箇所も少ない。コース脇にある木々の間隔が広いため、横移動もしやすく、それがひと山をまるまる滑っているような感覚に繋がっている。また、緯度が高いため1,000mくらいで森林限界となるから木々も少なく、遮る障害物が少ない。

スキー場中腹にある「林間コース」。木々がまばらに生えているので、ツリーラン初心者にもおすすめ

 グラン・ヒラフはなんと言っても眺望が素晴らしい。ニセコといえば、目の前に広がる羊蹄山を眺めながらの滑走がたまらない。どこから滑ってもこの山が視界に入ってきて、これぞニセコの景色が味わえる。また、周囲には羊蹄山以外に高い山がないため、山頂近くからは大パノラマが楽しめる。天候が安定する春シーズンだからこそ余市岳や洞爺湖、有珠山などの山々が拝め、目を凝らせば太平洋や日本海といった海まで見える。広々とした北の大地を心ゆくまで堪能できるのも、春ならではの楽しみ方だ。

これぞグラン・ヒラフの景色。スキー場山頂からのダイナミックコース。斜度はあるが、滑ってみたいコースのひとつ