山上の季節は一気に進み、早くも夜には0℃近くまで冷え込む山域も多くなってきた。ここから紅葉シーズンを経て、山が雪に閉ざされるまではあっという間。無雪期の高所にチャレンジできるチャンスは残り少ない。
ということで、今の時期でも比較的手軽に百名山「金峰山」を狙える、極めて効率的な「大弛峠ルート」を紹介しよう。シーズン終盤の山行計画の参考にどうぞ。
■スタートは2,000mを超える大弛峠から
このルートが人気を集める反面、登山者がそこまで多くないのは、スタート地点が標高2,345mと日本一標高の高い車道峠「大弛峠」であることが理由である。
金峰山(標高2,585m)へと続く稜線上にスタートから立てるメリットは大きい。多少のアップダウンはあるものの、総高低差は600m弱と、この標高帯の山頂を目指すルートとしてはかなり少なくて済む。スタート地点の標高が高いので、夏場にもおすすめしたい。
その反面、この大弛峠までのアプローチがなかなかの難関だ。まず、公共交通機関が通っていないため、マイカーかタクシー利用に限られること。最寄り駅のJR塩山駅からグネグネした狭い山道(川上牧丘林道)をひたすら1時間半近くドライブしなければならないこと。そして、駐車場のスペースが30台ほどと限られるので、ハイシーズンの週末はわざわざやってきても車が停められない可能性もあることから、ここまで足を運ぶのを敬遠する登山者も少なくないのだ。
*例年12月1日〜5月31日まで林道は冬季閉鎖
■山頂までのルートは単純明快
歩き始めるまでの課題についてはこのくらいにして、今回のルートをざっくりと紹介してみよう。
歩き始めは展望こそないが、甘い香りが漂う針葉樹の森に心地の良い木漏れ日が射し込む道をゆく。整備の行き届いた道は歩きやすく(とはいえ、登山靴などの装備は必須)、足元をよく見ると可愛らしいキノコをいくつも見つけることもできるだろう。
いくつかの小さなコブを上り下りすると、30分ほどで開けた朝日峠に出る。この先は朝日岳まで少しだけ登りが続くので、まずはここでひと息入れるといい。
さらに30分ほどで辿り着く朝日岳の山頂は、少しだけ展望がある程度。この先、鉄山の北側を巻き、金峰山までの1時間半の道のりも山頂の巨岩の少し手前で視界が開けるまでは、ひたすら森歩きが続く。
一本道なので、ここまでは道迷いの心配はない。暖かな季節は雨の森を歩くのにも非常に美しいルートである(今の時期の雨は、かなり寒いので要注意)。