■三斗小屋温泉で神の湯のパワーにどっぷり浸る

三斗小屋温泉にある宿泊施設のひとつ、煙草屋の外観。露天風呂とテント場がある山小屋だ

 三斗小屋温泉には、ふたつの宿がある。その風情ある建築ともてなしにファンの多い大黒屋と、露天風呂とテント場をセットで楽しめる煙草屋だ。前者は旅館、後者は山小屋のような雰囲気だから、好みで選択するとよい(どちらも完全予約制)。

 ぼくはテント泊と露天風呂を楽しみたいために、重い荷物を背負って煙草屋を度々訪れたけれど、これが本当に気に入っている。今年はすでに2回行ってしまったほど。もしかしたら、秋ごろにもう1回……とも考えていたりして。

暑さが過ぎると徐々にリンドウが咲き始める

 ところで、かつて茶臼岳の山腹にある源泉を御神体とする「高湯山」と「白湯山」なる信仰があったことをご存じだろうか。山と名に付くものの、どうやらお湯の出る山域そのもののことを指すらしい。那須高原の湯本に鎮座する那須温泉神社から登拝することを高湯山信仰といい、会津側の三斗小屋(跡)から登拝することを白湯山信仰といい、いずれも信仰の源流は同じだそうだ。

 ずいぶん昔のことだけれど、湯本の鹿の湯の近くにある那須温泉神社にて高湯山大権現の碑を見たことがあり、気になって調べたのだ。茶臼岳に登って三斗小屋温泉に泊まることがなければ、その意味を知ることはなかったかもしれない。そう考えると、登山とは学びの手段としてとても優れた行為だなと、ぼくは思う。