東京都心は、30℃近い初夏の陽気になった4月末。南アルプスの麓、釜無川水系の沢へと足を運んだ。
中央高速から見上げる主稜線は、まだ真っ白な雪に埋まっている。しかし、沢に踏み入ると、そこかしこに春の気配が感じられた。
■1,200m前後まで芽吹き始めている
木々の枝先には小さな新芽がびっしり。南アルプス北部エリアの新緑は、4月末現在で1,000〜1,200mほどまで駆け上がってきている。
山肌はこんもりと盛り上がり、新緑の淡い黄緑色と山桜やツツジの薄いピンクが織りなす、柔らかな絨毯のようだ。
■足元にも、そこかしこに草花が
スタスタ通り過ぎてしまうと気がつかないが、沢沿いの足元に目を移すと、春の訪れを告げるようにたくさんの草花が芽吹き始めている。
特に沢沿いや雪渓が溶け残る周りは植物の宝庫。ゆっくりとミクロの世界を観察してみるのも、この時期ならではの山の楽しみ方だろう。この日は、開花したばかりのネコノメソウやカタクリの群生が見られた。
■肝心の川の中、イワナのご機嫌も伺ってみよう……
のんびりと沢沿いを散策するうちに、水面に陽が射し込めた。水温が上がり始めると、しきりに虫たちが飛び始めたので、ゆるりと釣竿を用意する。
流した毛鉤に飛び出たのは、黄色味がかった体色、橙色の斑点を持つ美しいイワナ。その後も釣り上がると、岩魚たちがポツポツと顔を出してくれて楽しませてもらった。
すれ違った釣り師によると、前日に林道沿いで熊を目撃したとのこと。月末を機にゲートがオープンとなる林道も多い。熊や落石など、危険には気をつけつつ、短い春を楽しんでいただきたい。