■残雪期登山とは?  南アルプスのおすすめ残雪期コース

 南アルプスも4月に入り、気温の上昇とともに雪解けが急速に進む変わり目の季節となる。標高3000m付近でも朝の気温が氷点下を下回らない日も出てきて、天気の良い日中ともなれば、照り返しもあってか、半袖になりたいくらい暑さを感じるなんてこともある。厳しい寒さに晒され続ける厳冬期登山と違い、気持ちに余裕が出てくるので、のんびりと雪山を楽しむ時間が持てるよになるのが、残雪期登山と呼ばれるこの時期ならではだろう。

 つい先日、南アルプスの残雪期におすすめしたい鳳凰三山の夜叉神峠登山口から観音岳へと登るルートを、のんびり1泊2日のテント泊で歩いてきたので、雪や登山道の状況をお伝えしたい。

雪解けの進む鳳凰三山の稜線。対岸の白峰三山はまだまだ雪深い。南アルプスの高山帯では春に積雪が増えることもあったが、近年の温暖化で雪解けは早まっているのかも

■日帰りハイカーも多い人気の理由

 登り始めは、標高1380mの夜叉神峠登山口。観音岳は標高2840mなので、標高差は1500m弱となる。南アルプスでこの標高差は、比較的入門編になる(とはいえ、雪山未経験者には向かない。それなりの経験と装備が必要なことはいうまでもないので要注意)。ちなみに、南アルプスで残雪期に入山しやすいもう一本の登山道は、甲斐駒ヶ岳に続く標高差2000m以上を誇る黒戸尾根だろう。ただ、登山道はテクニカルで、残雪期が一年でももっともリスクが大きくなるので、おすすめはしづらい。

 一方で夜叉神コースは、稜線までひたすら樹林帯の長い登りが続く。風の影響も受けづらく、危険箇所もほとんどないので、筆者が登った日曜日は、軽快に日帰りするハイカーの多さに驚いたほどだ。ルート上からは残雪をまとう白峰三山から連なる南アルプス主峰群はもちろん、富士山の大展望まで楽しめちゃうのだから、人気なのも納得だ。ハイカー達の多くは、チェーンスパイクとストックのスタイル。天候が良ければ、ヘッドランプを点けて暗いうちから歩き出して、午後には下山してこられるのは、南アルプスでも稀有なルートなのだろう。

残雪模様の鳳凰稜線。なだらかで歩きやすいのもあり、観音岳は人気の山頂だ