■春の雪山装備ならではのリスク

 歩き始めて1時間ほど、標高2000m付近から氷と雪がミックスした箇所が現れ始めたので、チェーンスパイクを装着。チェーンアイゼンは軽量で着け外しもしやすいので、微妙な積雪の場所には便利なギアだ。もちろん、ザックには12本爪のアイゼンも備えてあるが、このときの鳳凰三山旅ではアイゼンは一度も出番がなかった。

 それにしても、夜叉神ルートはトレースが明瞭で、道を外さなければ歩きやすい。ちょっと試しに安全なところで道を外してみると、腰どころではない沈み様だ。雪も重く、まだまだ積雪は1m以上あるのだろう。GWあたりに新雪が降ることもあるので、悪天候予報のときは安易な入山は控えたい。

 この日は気温がぐんぐんと上昇して、インナー1枚になっても汗だくになる始末。ただ、日陰の登山道は固い雪のままで、ひんやりとしている。このギャップが残雪期のリスクに繋がる場合が多い。溶けては凍るを繰り返した雪面では、滑落事故が多くなるのも頭に入れておきたい。

森の中は溶けた雪が氷になっていた。溶けては凍るを繰り返す残雪期の大きなリスクがこの氷や雪面の変化だ

■宿泊地は森に囲まれた南御室小屋

 日陰のシラビソの森を歩いてると、突如現れるのが今宵のお宿となる南御室小屋だ。森に囲まれており、風の影響も少なめなので、積雪期のテント泊デビューにもおすすめ。避難小屋も綺麗なので、エスケープもしやすい。さらには、湧水が取れるのもありがたい。

 テントの入り口を開け放し、外の景色を眺めながら夕暮れ時までのんびりとお酒を楽しめるいい季節になったなとしみじみ。朝方は放置していた水は凍ったものの、厳冬期用の寝袋があれば寒さを感じることもなく、気づけば朝日に照らされて目覚める寝坊の朝を迎える始末だ。

貸切状態の南御室小屋のテント場。シラビソの森に囲まれていて、小屋の脇には湧水が出ている