■4. メンブレンはレイヤリングのため

 寒冷地でスキーを楽しむには、重ね着、いわゆる「レイヤリング」が欠かせません。その根底には、汗を吸った衣類を肌に触れさせないことと、汗を吸った衣類を早く乾かすことの2点の理由があります。

 身体に近い1枚目は肌に汗を残さない素材のものを選び、2枚目は汗を蒸発させる働きを備えたものを選びます。そして蒸気になった汗を放出するのがウエアの役目となりますが、雪や雨はさえぎりたいため、相反する機能を実現しているのが湿気だけを逃がして水は通さない「防水透湿性」なのです。

 その効能をフルに発揮させるためにはレイヤリングが不可欠になるので、防水透湿素材のウエアを着ればそれだけですべて解決!  とはいかないのです。

■5. メンブレンの種類

●目的は同じだが、特徴は様々

 メンブレンの目的は防水透湿性の確保ですが、いろいろな種類があり、それぞれに特徴があります。メンブレンの特徴を把握しておけば、風の強いときにはどんなジャケットを着ればいいのか、汗をかきやすい体質の人にはどんな素材が適しているのか、といった目安をたてることもできます。

●防風性もあわせ持つGORE-TEX®

 アメリカのWLゴア&アソシエイツ社が開発したGORE-TEX®は、単体ではゆで卵の薄膜のようなシートですが、そこには水蒸気より大きく水分子の集合体よりも小さな穴が無数にあいています。このことによって水蒸気は通すけれど水は通さないという、一種のふるいのような役割を果たすことができます。防水透湿性に加えて防風性も備えているのが特徴。

ゴアテックスのロゴ

●ストレッチするダーミザクス

 日本の東レ株式会社が開発したダーミザクス。優れた防水性や透湿性に加えて伸縮性を備えています。ストレッチ性を備えた生地と併用することで、動きやすさが大きく向上。また、メンブレン自体が非常に柔らかいことから、ウエアの着心地がソフトになることもメリットのひとつです。

ダーミザクスのロゴ

●風をも通す性質があるNeoShell

 アメリカのPOLARTEC社が開発したNeoShell。優れた防水透湿性に加えて、ごくわずかな通気性を備えています。これによってムレる前から湿気の放出が始まり、絶え間なく外の冷たい空気の取り入れが行われることになるのですが、通気性を備えていることから汗ムレが起こりにくく、ハイクアップの際にも脱ぎ着の回数が減るというメリットがあります。

NeoShellのロゴ

●その他の素材

 多くのウエアに使われる防水透湿性素材はここで挙げたメンブレンを採用していますが、なかには生地にコーティングを施したものも存在します。コーティング系の素材は、実用上十分な耐水圧と共に優れた透湿性を備えており、メンブレンがないことでしなやかさを高めることができます。

 

Text=Takuro Hayashi

 

【BRAVOSKI 2022 Winter Vol.1 より再編集】