■マイルールの徹底で、もう一歩先の世界へ

 僕の絶対的な基本方針として、「死なないこと」と「楽しく下ること」の2点がある。超当たり前のことだと思われるだろうが、それを改めて“強く意識する”ことが大切だと思っている。そのためにどうしたらいいかを常に考えている。そのどっちが欠けても安全からは遠ざかるからだ。

 この2つの基本方針を実現するために、僕は以下のようなマイルールを徹底した。もちろん、“段階”を経た上での自分なりのルールである。

1:初めての川は道路上からしっかり下見する(1日を要することもある)
2:危なそうな場所は必ずスカウティング(艇を降りて目視で確認)する
3:少しでも危険と判断したら迷わずポーテージ(陸上から迂回)する
4:激流には絶対に1人では行かない。行く場合は経験豊富な仲間と行く
5:鮎釣りが盛んな川は、解禁前の5月にしか下らない
6:それ以外の季節は釣り師の影響の少ない川にだけ行く

危険な場所をポーテージ(船を担いでパスすること)。軽いパックラフトだからこその利点

 僕の場合は、主目的が「川を下ること」ではなく「川とその流域を旅すること」だったので、ものすごい激流を下る能力は必要なく、川旅に必要な部分に特化して知識と経験を積んできた。自由な単独行がとにかく好きだったので、セルフレスキューに関しても強化した。そしてその自分のスタイルに合わせて、上記のマイルールを徹底した。    

 人にはそれぞれ、その人に合った道がある。まず目的をはっきりさせた上で、自分にとってベストな段階を経て、自分だけのマイルールを設定するといいだろう。僕の場合は、それらを徹底することで、単独行という自由なスタイルでも、無理なく各地の魅力的な川を旅することができたのである。