■現場で気をつけておきたいこと、守るべきこと

初心者向けのコースでも油断は禁物。計画的に歩きたい

●Q3. どのようなスケジュールを組むべきなのか?

 山小屋に泊まらない日帰りの場合、暗くなる前に戻ることが絶対条件。そうした意味でも、朝は極力早く、無理のないスケジュールを組みたい。「通常、歩き慣れた登山者でも登れるのは1時間300mほどです」(杉村氏)。パンフレットやサイトなどに登山ルートごとにおおよその所要時間が書いてあるので、それを目安にオーバーしていたら引き返そう。

●Q4. 山歩きの際の食事は?

 山歩きはエネルギー消費量が多いので、こまめに「行動食(行動の途中で食べるもの)」を摂取したい。

「私は100円ショップで買ったボトルに、チョコとナッツとドライフルーツを入れて、歩きながら食べています」(釈さん)。

「エネルギーを効率よく摂取できるものがいい。アメをなめるだけでも違います」(杉村氏)。

 一方、行動食とは別に、ランチも山での大きな楽しみとなる。山頂や絶景ポイントで、弁当やおにぎりを食べるのはまた格別。本当にうまい。それが頑張りのモチベーションにもなる。

山でのおにぎりは普段の何倍もおいしく感じるのはなぜなのか?

●Q5. 山でのトイレはどうする?

「登り始める前は必ず、すませておきましょう」(釈さん)

 数は少ないが、登山口近くや登山ルートの所々にトイレが設置されているので、可能な限りそこで出し切ろう。では、山でどうにもならなくなったときは?

「人間の排泄物は自然の循環にないものですから、実は環境を汚染します。その点から、緊急事態の際も自然の中で用を足すのはできるだけ避けて、携帯トイレを使っていただくのがベターです」(杉村氏)

●Q6. 山のマナーで知っておくべきものは?

 「"ゴミは持ち帰る"というのは基本ですね。あとは"登り優先"というのも一般的です」(釈さん)

"登り優先"とは、人とすれ違うときに斜面を登っている人を優先させるというもの。これには合理的な理由がある。

「杓子定規に"登りだから優先だ"ということではなく、"下りの人のほうが、登りの人より先まで見やすい"からです。安全にすれ違える場所に近い人が、その場所で待ってあげましょう」(杉村氏)

 さらに続けて「山は自由な場所です。その自由のベースになっているのは、一人ひとりのマナー。動植物・環境を気遣うことも、何より大切なマナーだと言えます」。

 マナーを守り、危険を減らすために対策を練れば、山は楽しく心躍る空間になる。

「知らない人とあいさつしたり、何かお話をする。そうしたことが自然にできるんです」(釈さん)

 

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