梅雨明け直前の晴天が続いた数日間を使い、前任者から光岳小屋の引き継ぎを行いました。これにて、正式に光岳小屋の小屋番に就任。

 いよいよ、「わたしの山小屋」が始まります。

■美味しい食事を一緒に囲めば、親睦が深まる?

ザックの中身はこちら。5日×5人分の食材です

 引き継ぎにあたり、前任者の原田さんと光岳小屋でお会いすることになった。面接ぶり、2回目。顔を合わせてお話しをするのは、なんと今回が初めて。ちょっと緊張する。

 川根本町役場の方も上がってきてくれるらしく、大人数で過ごすことになった。しばらく小屋に滞在するから、食料を買い込むぞ。食事は簡単なものでいいって話にはなったけど、野菜くらいは背負い上げたい。初めましての私たちだけれど、食卓を囲めばお近づきになれる気がするのだ。やっぱり食べないと力も出ないし。

 山小屋で使う食材は冷蔵が難しい。そう考えて、野菜を中心に日持ちのする加工品のハムも用意した。それから卵を5パック。これを2人で手分けして背負って登る。

 なんとか無事に小屋に届けられますように。大量の卵をいつもより丁寧にパッキングする。いざ参ろう。

■前任者の原田さんのこと

初の2ショット!原田さんと私

 原田さんが光岳小屋に入ったのは、20代前半のこと。管理人になってもう40年。とんでもない時間をこの山で過ごしている。その前は八ヶ岳の山小屋にいたそうだ。

 当時、この場所は無人小屋だったけど、原田さんが静岡県と川根本町を行ったり来たりして、いろいろな交渉を積み上げて、現在のような有人小屋にしたのだとか。

 原田さんには山男には見えないダンディさがある。いつも小汚い格好をしている私とは違い、着ているものもお洒落だし、白髪がとてもよく似合う。

 その昔、泥棒に入られたことがあったらしい。

「何かとられたんですか?」と聞いたら、「ドリップコーヒー10袋くらい飲み散らかしていたよ」との話には、笑いごとではないけれど思わず笑ってしまった。

 そんな風に作業工程も穏やかに教えてくれる。やっと動き出せたのにわからないことばかりで、これから無事にやっていけるのかと不安ばかりだけれど、原田さんの物腰と丁寧な引き継ぎは「大丈夫だ」と思わせる不思議な安心感があった。

 いまはまだ、想像も及ばないとんでもない長い時間をこの場所で過ごした原田さんには、たくさんの出来事とそして出会いがあったんだろう。ちょっと離れたこの場所の魅力を語るにも、私はまだまだペーペーだけれど、いつかいろんな出来事や山のことを一緒に話せる日がくればいいな。