■時を忘れてしばらく眺めたくなる! この雄大な景色のひみつ

ノシバを美味しそうに食べる馬

 この伸びやかな景観、じつは隠岐島特有の土壌や気候が深く関わっています。島には平坦な土地が少なく火山島であるために土地が痩せていて、表土が薄く土壌の栄養分が少ない。土地の起伏は激しくて急峻。そのため、牧畜と農業を交互に繰り返す四圃式(牧畑)農業(※4)が、かつて島全体で行なわれていたことを表しています。その証拠が牧と牧の間を仕切るための石垣などを島のあちこちで見かけます。

隠岐ブランド牛を隠岐の天然塩でいただく。牛さんありがとう!

 島で放牧されている牛や馬は起伏が激しい放牧地を歩き回りながら草を食べます。草原のノシバには潮風が運ぶ豊富なミネラルが含まれています。

 島育ちの子牛は、足腰が丈夫で免疫力が強く、性格が穏やかな健康なウシとして競りにかけられ、各地のブランド牛になるそうです。隠岐島でも肉質の良い「隠岐牛」「隠岐黒磯牛」を味わうこともできます。このように島独特の風土により牧畜産業が支えられてもいることも知り、よりいっそう隠岐のブランド牛が美味しく思えたのでした。

 そして、台地に放たれている馬たちは、かつては馬肉用として飼育されていました。移動しながらノシバを食べることで、まるで天然芝刈り機のように、摩天崖の芝生の美しい景観を保つ役割を果たしてくれています。なくてはならない存在なのです。

※4  区分した牧を牧畜、休耕、農作(土の中の使う養分が異なる、豆類、イモ、ムギなどを交互に耕作)の4年サイクルで使うことで、土壌のポテンシャルを維持しながら農業を行なう方法。

 次回は、島の風土や歴史にも触れたいと思います。今回は西ノ島しかご紹介できませんでしたから他の島の魅力も。どうぞお楽しみに。