まだまだ暑さの残る季節、山歩きに出かけたいけれど、強い日差しの下を歩き続けるのはちょっとしんどい。そんな日におすすめしたいのが、神奈川県西部に位置する西丹沢エリアです。

 首都圏から比較的アクセスしやすく、それでいて都内近郊の山や東丹沢の人気コースほど混雑していないのが、西丹沢の魅力です。さらに、しっかり歩きごたえがありながら、沢沿いを歩くことで涼しさを感じられる。さらに稜線に上がっても樹林の中を歩く区間が多く、直射日光を避けられる。暑い季節の山歩きとして、じつはかなり相性のいい山域なのです。

◼️西沢沿いから、涼しい山歩きが始まる

西丹沢ビジターセンターの標高は540m

 登山の起点となるのは、標高540mの西丹沢ビジターセンター。都心部からは、車で1時間半ほどの距離です。

 体力や経験値に合わせて、ルート設計の自由度が高いのも、この山域のいいところ。今回は、西の沢沿いを進んで畦ヶ丸(あぜがまる・標高1,293m)を目指す中級者向けのルートを選びました。

透明度の高い沢が流れる

 無料の駐車場に車を駐め、吊り橋を渡って山へ入ると、しばらくは沢の流れに沿って歩く道が続きます。木橋で何度も沢を渡り、涼しげな沢音を聞きながら進みます。

 途中には下棚と本棚という2つの滝もあります。下棚は落差約40m、本棚は約60m。特に、本棚は壁のようにそびえる西丹沢を代表する滝です。少々登山道から外れるので、見に行く場合は分岐の看板を見逃さないようにしましょう。

下界とは気温がはっきりと違う

 しかし、このルートは本棚沢出合まで2kmほど続くほとんどフラットな沢沿いの道が、暑い日は本当に気持ちいい。歩いたのは8月末で、この日の街の気温は33℃。しかし、歩き始めた沢沿いは20℃少々と、立ち止まるとひんやりと肌寒さを感じるほどの涼しさでした。

見るからに涼しげでしょう?

 ただし、沢沿いのルートならではの注意点もあります。雨が降ったあとや大雨のあとには沢が増水し、普段は渡れる場所でも水量が増えて危険になることがあります。天候が不安定な日は無理に入山せず、出発前に最新の登山道情報を確認しておきたいところです。

◼️沢を離れたら、しっかり登って畦ヶ丸へ

ここからググッと標高を上げていく

 滝を過ぎ、本棚沢出合からは、いよいよ本格的な登りが始まります。善六ノタワまで、1時間半ほどぎゅっと標高を上げていくこの区間は、沢沿いの涼しさとは一転して、しっかり汗をかく急な登りが続きます。

稜線に乗ってしまえば、あとは気持ちの良い森の中を行く

 善六ノタワまで上がってしまえば、あとはブナやアセビの自然林がつくる涼しい日陰の中を進みます。畦ヶ丸の稜線は、展望が大きく開ける山というより、気持ちのいい森の中を歩く印象です。だからこそ、暑い日にはありがたい。直射日光を避けながら歩けるうえ、ときおり沢から吹き上がってくる気持ちのいい風が木々の間を駆け抜けていきます。

 耳を澄ませば沢の音。木々を揺らす風。そして、少しずつ季節が変わり始めた森の空気。

 街ではまだ真夏の暑さが残っていても、山の中では「もう秋が近いな」と感じる瞬間があります。夏の終わりの畦ヶ丸は、そんな季節の変化を感じながら歩くのにもぴったりです。